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ちはやふる ー結びーのpenのレビュー・感想・評価

ちはやふる ー結びー(2018年製作の映画)
5.0
前作までと同様に群像劇のスタイルで物語は進んでいくけど、メインとなるのはやっぱり太一と千早で、本作はこの2人が自身の内側の足りない部分を埋めて完成するまでを描いた映画のように思う。何かが足りないことを強調するかのように、2人の周囲の登場人物達は成長や失敗をするけど自身の行動の規範は持っているように描かれているし、千早達と1作目から苦楽を共にした仲間は、助言を与える導く側の存在になっている。それが1~2作目の頃から時間が経ったことも同時に感じさせ、限りある時間の中で生きる高校生達の姿を捉えてもいるように感じる。

千早と太一が完成形となる為の最後のピースが一体何なのか、それは観てもらえば分かることだしそもそも観る前に何となく予想出来てしまうかもしれないが、完成に至るまでの行程を前2作の積み重ねを無駄にせず描ききったという点が完結編として素晴らしい。言葉の代わりに畳や腰紐といった競技かるたに関係するモノで想いを表現するというアイテムの使い方にもグッと来た。

細かいところでいうと競技かるたを描くシーンはより魅力的になっており、ドキュメンタリーチックな長回しの撮影が行われる場面は、その場にいる観客同様にドキドキさせられ、登場人物の顔にクローズアップする場面は今まで以上に睨む目を印象深くしている。その演出に役者も応えていて、特に終盤の広瀬すずの眼はまさしく虎の目だ。
そして競技かるたというからには勝者がいると同時に敗者もいる訳で、本作ではそのことをさらりと見せる。若者達のドラマが存在するのは千早やその周囲だけではないことが提示されるのは、完結編だからだろうか。

とにかく語れることが多いように思える作品。前2作を観るとより良いが、高校時代に何かに打ち込んだ経験がある人、もしくは今打ち込んでいる人が観ても、心に響くものがある映画じゃないかと思う。
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