ホルモン焼うどんテン女将ちゃん

椿、母に会いにのホルモン焼うどんテン女将ちゃんのレビュー・感想・評価

椿、母に会いに(2016年製作の映画)
5.0
静かでした、静かなストーリー。今まさに開発され動きある激しい大阪の街と喧騒を離れた下町の見慣れた路地裏、梶井基次郎の「檸檬」みたいに街も光と影。大阪の街中にマスクで顔の半分を隠した女の子も今は見慣れた風景のひとつでした。椿ちゃんの心の中も光と影。見慣れた風景の中で淡々と静かな日常が続くのかと思いました。不思議なキャラクターの人々が徐々に椿ちゃんの周りに来たり離れたりしている間に、椿ちゃんも若くもなく、老いてもなく、生きる為に働くのか、働く為に生きるのか、思春期ほど反発もなく、流されて生きていると、もう現実を変えにくくなる。30歳ごろって思春期から2度目の生まれた意味を考える時期なのかも。その生まれた原点である母との距離や関係にぎこちなくて、家を離れて長くなると親との距離感が掴めなくてツライ、私と似ていて見ていて本当に身につまされて息苦しくなった。そんな気持ちになった方が多かったのでは無いかなぁ。大切な事なのに誰しもスルーしたい事に静かに問題提起された気がします。マスクする事でどこか心をオフって世の中を俯瞰で見る…椿ちゃんが選んだ職業はソコにぴったりハマる。世の中に問題提起するには絶妙な設定、小さな事件、微かな心の動きが全てが絶妙なサジ加減。さり気なさ過ぎる日常の中、椿ちゃんは答えは出たのか、出て無いのか。コチラが考えなくてはならない意味でもスゴく心に残る。