わんこ我々はら組

寝ても覚めてものわんこ我々はら組のレビュー・感想・評価

寝ても覚めても(2018年製作の映画)
4.1
濱口竜介監督作品サブスクで探すのだいぶ難しいな。

最新作『悪は存在しない』のために見れるものは見ていこう!

と、いうことで今作は序盤の写真展で朝子が目撃したように、瓜二つの2人、麦と亮平が彼女の前に現れることで最悪な決定を朝子がしてしまう思い出と意思決定による帰結、人の成長を圧倒的な演出力で見せていきます。

恋愛のフィクションなので好き嫌いはあると思いますが、普遍性を持った作品であることは間違いがありません。

特に今作は反復演出が多用されています。麦との思い出を朝子が反復するように、亮平とのシーンではそのアクションを行う人間の性別が反転して、朝子の未練を表現していきます。

朝子の人生の通奏低音となった麦との思い出は、物語終盤朝子の最悪な決断に向かわせます。

「いい人になった気でいたい」(記憶により間違っているかも)ですが、朝子は自分が最悪な決断をしていることを最初からわかっているようでした。春代が物語序盤で朝子に対し麦と付き合うことを止めますがそもそも朝子はそのことに気づいてはいるのです。その後亮平と付き合うことも間違いだとわかっていながら止めることができません。人生では自分が理性では考えられない最悪な決断をしてしまうというカオスをこの映画では描いていきます。

最後のシーンではその決断によって招いてしまった最悪な傷を悔やみ、しかし自分は自分なんだと自らを否定しない。観客の人生を否定しない、個人主義的な新しい監督として新しい時代の監督の凄さを見せつけられました。