長文です。
めちゃくちゃ大好きな監督の作品なので。
日本では話題になりませんでした。
でも脚色せず綺麗事もなく
とてもいい映画です。
海外の是枝監督のような人の3作目。
とにかくカメラワークに色使い、
脚本、本当に毎回惹きつけられます。
(前作は全編iPhone5Sで撮影した事で
話題になりました)
同時期に上映の「万引き家族」に比べ
大きな賞も話題も全く取っていません。
今回も低予算なので主役はほぼ無名
・インスタで探した演技初体験者
・その他は現地でスカウト
でも、社会のほんの片隅にいる人にもスポットを当てたいと願う監督の優しさ、お金がなくても苦労して低予算の撮影でも、ここには「伝えたいもの」があるんだという強い願いを感じます。
映画は「サブプライム住宅ローンの危機」がベース。(アメリカ全土で600万人がホームレスになった出来事)
舞台はディズニーワールドが直ぐ隣の格安モーテル。
そこで、その日暮らしをする母と6歳の娘の物語。
作品は徹底して6歳の女の子の視点で描かれます。
カメラは子供目線か、それより低いアングル。
そして、どんな悲惨な状況でも大人の想像と違い、
子供から見る世界は、いつも輝いている。
だから、この映画は夕陽、花火、全てが美しく
建物はポップでカラフル。
まるで表面上はインスタ映えの
現代社会すら含め描いています。
6歳のひと夏。子供同士、ポップな街や野山を駆け回り、毎日が楽しくてしょうがない毎日。
でも、一切の説明が無い中で、ぼんやりとしていた現実が見えた時、彼女たちが置かれた現実に絶句しました。
映画のタイトル「フロリダ・プロジェクト」は、
ディズニーリゾート建設の初期プロジェクト名だそう。
子供達のために作られた夢の国ディズニーワールドのすぐ隣に、ホームレスの最後の駆け込み寺があり、全く違う世界に暮らす家族がいる。多くの子供達が「ディズニー」が何かも知らず、食べ物も何もかも足りない中で生きている。
そしてそのことを私たちは
「誰も全く知らない」
ラストシーンは誰もが戸惑います。
映像も撮影許可が下りない場所のゲリラ撮影。
突然ブレブレのiPhoneでの撮影に。
そのゲリラ撮影をしてでも伝えたいラストが
この映画のタイトル
「フロリダプロジェクト"真夏の魔法"」
に結びつき、理想と現実と皮肉を表していました。
そこまでは、ポップでカラフルで
全てが絵になる美しい世界。
6歳の女の子が見る魔法のような毎日。
悲惨な現実を知らず、泣きもせず、
毎日笑ってばかりの楽しい日々。
お金が無くても、学校に行かなくても、
大好きなお母さんや友達と一緒なら幸せ…
人にとっての本当の幸せとは… と、
シンプルな問いを投げかけられました。
「伝えたい世界を具現化する」という
"映画"としての表現が素晴らしい作品。
自分には関係のないことであっても、
「知らない」で素通りするのではなく、
知ろうとすることが大切だという
メッセージをひしひしと感じ、
私たちの当たり前は当たり前ではなく
どれだけ恵まれているのか
本当に感謝させられました。