Hiroki

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法のHirokiのレビュー・感想・評価

4.0
まずタイトルについて。『フロリダ・プロジェクト』はディズニーワールド開発段階の名称であり、プロジェクトはアメリカの低所得者向け集合住宅の事でこのダブルミーニング。
もちろん我々日本人には意味不明なので配給会社はわけわからんキャッチーなタイトルに変えたいところだけど、配給元のクロック・ワークスは良く我慢して原題のままにしたとおもう。
我慢しきれず“真夏の魔法”という、本編を見ると意味不明の副題をつけてしまった事にはギリ目をつむる。

ショーン・ベイカーはマイノリティとか底辺で暮らす人々×都市を撮らせたら最強。
今作もフロリダの街並がまー綺麗なこと。
そして撮影。
『タンジェリン』は全編iPhone撮影で話題だったけど、今回は35mm。
そして子供目線のローアングルと俯瞰した(大人目線の)アングル。コントラストの使い方が素晴らしい。

内容的には、これも『タンジェリン』同様、そこで生きている人々を、頑なに第三者目線で描く。
登場人物誰にも、主人公にさえも一切感情移入させない。
否定的な目線も肯定的な目線も持たない、ただただフラットな目線を貫く。
それはなんとなく起伏がなく流れていってしまいがちになるんだけど、そこは撮影や脚本で上手くカバー。
脚本もかなり練りこまれていて、伏線もたくさんある。
途中から娘役のブルックリン・プリンスが1人でお風呂に入ってるシーンが多くて違和感があるんだけど、これの意味が後半わかるシーンはゾッとする。

あとはやはり最後の“マジカルエンド”かな。
ここがこの映画を賛否両論させてる所だとおもうんだけど、個人的には悪くないと思う。
最初は「えっ?」ってなるんだけど、よく見るとあのシーンだけiPhoneで撮影されてる。
しかも許可なしのゲリラ撮影らしい。
ここに凄く意味があるんじゃないかと。
夢の国に若者のシンボルであるiPhoneを持ってゲリラで突っ込むみたいな。
そう考えるとすごくシニカルなシーンに思えてくる。
まぁでもそもそもこういう社会性のある映画は、議論を起こさせること自体が存在意義みたいな所があると思うからその意味ではショーン・ベイカーの筋書き通りな気もします。

最後に役者陣は総じて良い。
子役みんなそこまで美形じゃないのがリアルだし、言動は粗暴だけどとにかくかわいい!
あとはウィレム・デフォー最高。怖い顔だけど愛が溢れでてます。
そしてめちゃくちゃチョイ役のケイレヴ・ランドリー・ジョーンズに笑う。

2018-102
Hiroki

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