もな

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法のもなのレビュー・感想・評価

3.9
内容の重さに反して、とにかく子供たちが生き生きしているのが印象的だった。不躾な悪ガキだが、無邪気に牛を見たりアイスクリームを回し食べしたり。未成熟なまま母親になった親子の、友達のような関係性の中には、2人だけの確かな愛があり、ボビーを含め、周りの大人たちにも守られている。本人たちは決して不幸ではなく、彼らなりのかけがえのない時間を過ごしている。

しかし、ムーニーたちのいたずらは、他人の車に唾をかける所から、停電を起こし、古い空き家に火をつける等、事態が大きくなっていく。一方、母親は押し売り、物乞い、売春とエスカレートしていく。生活が厳しいなか、将来的にこのまま親子で共倒れするのは目に見えている。

どんなに貧しくても幸せならいいのかと言えば違う。支配人のボビーのような善意ある人の協力があってさえ、親子はあの展開になってしまった。ボビーが、親子を絶妙な距離感で見守っているのが本当に温かかったが、それに気付けない親子の感じも切ない。。改めて思うのは、どんな犯罪や事件も、背景には貧困や家庭環境など、本人の意思ではどうにもならない要因があること、人生何が起こるかわからないうちは、必ず明日は我が身だということを胸に留めたい。

そして、最後のシーン、ムーニー達が向かう先は、皮肉にも夢の国だ。ディズニーランドに入った瞬間の絶望感は本当に凄かった。
エンタメやお伽の世界は、ムーニーのあの涙を救えない。救えるのは共助、公助のシステムだが、彼女たちは拾ってもらえなかった。そして、その末路がこんなにも社会から葬られるのかと恐ろしかった。
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