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ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリスのhamonicanのレビュー・感想・評価

5.0
本や資料を貸し借りする役割にとどまらず、就職支援、教育、点字・手話、ロボットプログラミング、講演、PC教室、読書会、ダンス会、美術展示、パーティ、演奏会、朗読など、多角的な面で市民に平等に学ぶ機会と情報交換のコミュニティを提供しているニューヨーク公共図書館。すごい、この図書館にいけばなんでもある…!

ここに訪れる市民たちの顔がただただ映るだけの時間がたくさんあって、顔ってすごく物語ってるなあと思って、人間の営みの尊さに泣いてしまった。

ITリテラシーやネット環境も平等にするために、PCやWi-Fiを無料で貸し出し教室を開く。ホームレスの人々とはどう付き合うか等も議論になる。
「やりたいこととやってることを一致させることが大事」この言葉にあるように、知識と情報へのアクセスの平等と機会均等という理想の状態に向かい、一つ一つの穴や差を丁寧に埋めていくことを働く人たちはやっていた。
単に理想主義ではなく、予算と戦いながら、というところもしっかり描かれている。どうやって説得してお金を集めるか、とか お金の話がかなり具体的に何度も出てくるのが面白かった。

「図書館とは、人である。ただの本の置き場ではない。人間が知識を求める限り図書館はあり続ける」「図書館は民主主義の柱」「図書館は雲の中の虹」
こういった図書館の定義ならば、単に貸し借りする場という図書館という既存の枠をぶっこわしていく方が自然なのだ。

最も感動したのは黒人文化研究図書館の場面
黒人の人々がそれぞれに境遇を訴えた後「それでも私達には図書館があるし、生涯通うこともできる」とムハマド館長。中には「俺は図書館育ち」という人もいた。
ようやく、というか今まで考えたこともなかったけど、図書館が“公共施設”で無料であることの意義をやっと理解した。

図書館に呼び込むための工夫は本当に数多く凝らされている。
「子供たちには知識や情報がここにあるとは伝えても、押し付けることはできない」人間のあり方を考えれば、本当に、誰も、何も押し付けることなんてできないのだと思った。こちら側ができることをやって待つだけなのだ。

人間の権利、平等、叡智、歴史、問題解決への姿勢と対話、「人間の本質を知りたい」という壮大欲求の宇宙に星をぽちぽち落としてくようなすばらしい時間だった、ありがとうございました。

(それにしても、平等と機会均等のために真剣に(むしろ平常心で)議論する人たちを見た後に、首相の「エレベーター設置は大きなミス」という発言 しかもそれをジョークとしているのを見てしまうとほんとにがっくりくるね)
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