歪み真珠

ビール・ストリートの恋人たちの歪み真珠のレビュー・感想・評価

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「私は彼を私の人生におけるもっとも美しい人だと思った」

バリージェンキンス監督は私の大好きな『世界の秘密を誰かと共有すること。そしてその記憶が結晶となりずっと心のなかで輝きつづける』というのを見事にやってくれる。大好きです。ムーンライトの「夜、月に照らされた肌はブルーにひかる。ブルーだ!」
わたしがやりたい愛はこれなんだ。世界の秘密の共有。そしてそれが誰かを生かすものとなる。「恋愛」じゃなくて、こんな愛を好きな人たちとやっていきたい。好きだな…かなり好きだ、バリージェンキンス。

静かに穏やかに、そして決して煽らない誠実さと、語られる差別の歴史の熱が冷めない。言い様のない、根拠なき憎悪の目に戸惑う。警官の狡猾な目が忘れられない。

静かに淡々と進むストーリーと揺らぐ黒い肌。この人が撮る黒い肌はとってもきれいだ。虹色が映える。そしてお洋服が可愛い。冒頭の秋の景色とウォームトーンの黄色と青。二人の優しくて穏やかな愛がきちんと伝わる。彼女にはペールトーンがよく似合う。彼の洋服のくたっとした雰囲気も上手だった。ストーリーも洋服も肌の表現もすべてがきちんと折り目正しく、それでいて窮屈でない居心地がよい空気だった。親子の愛と恋人同士の愛、友人への愛と、隣人への愛と。法の外にある人間性の愛と、法で守られない彼らの悔しさと哀しみがしっかり表現されていた。


「私は彼を私の人生におけるもっとも美しい人だと思った」
はじめから泣かさないでくれ。見つめあう二人が本当にほんとうに幸せそうで あぁ ふわふわと浮いたような、地に足がついてないような夢見心地の恋よ。ずっとずっとそうやって見つめあっていてくれ。世界がどうあったとしても、ずっと見つめあっていてほしい。きちんと相手を見つめることの素晴らしいこと。写し鏡なんかじゃなくて、相手をまるごと吸い込むような尊い愛よ。人の愛を見て泣くなんて、、バリージェンキンスめ。いくら言葉を尽くしてもあの二人の見つめあう瞳には到底届かない。世界があまりにも理不尽だから、より二人の愛が目映くて、これを信じてみようと思えた。

人を愛したい、海がみたい。