ギサク

スリー・ビルボードのギサクのレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
4.4
とても好き。正直地上で観たかった。子供に優しい卑語修正版だったのでずっとそれに気がとられていた。

亡くした子を思慕するお母さんの怒りと哀惜に同情してしまう。その荒ぶった感情によって街の人々が混沌に巻き込まれていくのを見て、愛があってこその憎しみは怖く、悲しみがあってこその怒りは強いなと思った。よく聞くことだが、暴力では何も解決しない。嘘と言ってもいいが、暴力は人の心に癒しを与えることなくただ新たな怒りと憎しみを植え付けるだけだ。だが、暴力は怒りの行き所でもある。背負うものはたしかに増えるが、少し心を落ち着かせたりもする。そういうことを思わせてくれる作品。

演技も脚本も、とにかく人間描写がうまい。優しく、残酷で、ユーモアのある作品。長年シカトしてきたおばあちゃんが死ぬ間際にビンタしたのち暖かく抱擁してくれるような。どうしても暴走するサム・ロックウェルが嫌いになれない。悲喜劇万歳!!!!
ギサク

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