冒頭、キリンの首に縄がかけられるショットに続いて、海の上の船で檻に入れられたキリンが隣の檻のキリンと互いの首を交差させるショット。ここですでに観客は童話的なナラティブに引き込まれる。全編通して、「ドキュメンタリー」がかくも単純で愛らしい世界観の中に収まってしまうことに不思議と励まされるような気がする映画。猛獣の登場するところではスクリーンから彼らがはみ出ているような「迫力」があって、思わず笑ってしまった。ライオンの子、太郎は卵黄入りのミルクを飲み、おじさんに抱きしめられ、園内を散歩してチンパンジーやウサギと一緒に遊ぶ。太郎がライオンの檻に近づくと、母ライオンが文字通り「飛んでくる」。そのように動物園の動物としては特権的に振る舞えるのは、太郎が幼いから特別に許された時間でしかないことがわかる。もちろん人間と違ってライオンにあるのは現在だけだ。多摩動物公園の予定地というだだっ広い空き地での幸福な時間は、そのあとで突然太郎が北京へ送られてしまうことと全く関係なく美しい。
この映画を見て、『クリーピー』『パラサイト』のあの重い扉は、動物園の扉だったのだと気づいた。(←嘘です。『悪魔のいけにえ』の屠殺場の扉ですね)
これから動物倫理について勉強します。