Karen

ライオンは今夜死ぬのKarenのレビュー・感想・評価

ライオンは今夜死ぬ(2017年製作の映画)
4.5
映像を職業にしている人、もうあと残された人生どれくらいやねん…なんて死を意識し始めた人にも観て欲しい(長いです)

ジャン=ピエール・レオーと 日本各地でこどもたちに向けて映画ワークショップを行っている諏訪監督のタッグということで、この映画でも実際にこどもたちがジャン=ピエール・レオー演じる「死を演じることができない」ジャンという俳優に、自分たちの映画に出てほしいと頼み、一緒に映画制作をすることになります。

わたしが特に好きだったのはこどもたちとジャンが一緒に食事をしているシーン 2回ありますが、2回ともだいすきです .

「将来何になりたいの?」と尋ねるジャンに対し、こどもたちは各々なりたい職業を答えていきます。それを見守る彼の優しい眼差しも大好きなのですが、スタイリストになりたいと言った女の子に対してジャンは「君は今いくつ?」と聞きます。

「7歳…もう分別がつく年頃だね。私はもう70歳を超えたが、この歳になると分別がつかなくなるんだよ」

幼少に比べて物事の分別がつくようになる、という意味かと最初の一言で思っていたらそうではない、と彼はいうのです。歳をとるといろんなのものにとらわれて、自由ではなくなってしまう。こどもである時のあの、なんにでもなれる気がした万能感や希望をみた未来、そういったものは本当にいつの間にか私たちの中から姿を消して、世界はわたしたちに向けて厳しい現実をびしびし叩きつけてきます。本当はそこにとらわれず、いくつになっても自由に生きれればいいのに、やはりそうはいかない。だから難しいけど、いま自由であるその感覚を忘れないように 、と彼はこどもたちに伝えます。

食事というのは誰にとっても生きるために必要な普遍的な行為であり、人間が無防備で素になる時間だと思います。こどもたちがジャンを囲み、同じものを食べながら、彼がこの話をした… この映画に出たこどもたちも自由であることを忘れずに生きていければ(そして自分もそうでありたい)、と心から素敵だと思えるシーンでした。

こどもたちが劇中で作っている映画は実際に彼らが脚本などすべて自分たちで考えたもの。(諏訪監督はこどもたちが映画をつくるそのプロセスがおもしろいので、映画にも取り入れたそうです)
完成した映画をみんなで観ている時のこどもたちの顔が、本当に素晴らしくいい表情で、それを観ているだけでぼろぼろ泣けてしまいました。今は仕事になりましたが、そうそう、映画、映像つくるのって楽しかったんだよな……みたいな気持ちになるので、映像を職業にしている人にもみてほしかった(笑)映像は楽しい
Karen

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