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泣き虫しょったんの奇跡のshowのネタバレレビュー・内容・結末

泣き虫しょったんの奇跡(2018年製作の映画)
3.1

このレビューはネタバレを含みます

◆プレッシャーに弱い天才の話、でいいのかな

一度プロ入りの夢が破れた奨励会員が、規定のないプロ編入試験を実現し合格するまでの成功譚。 

途中までは「あー頑張ったら夢叶う系の映画ね」と思い込んでいた。そういうのが僕は好きではないので、こりゃ低評価かな、と考えていた。

でも、見ているうちに、「あれ」となっていく。
どうも主人公の瀬川が「血の滲むような努力をする」という場面が描かれないのだ。少年時代の瀬川はずっと好きで将棋をやっていて、「努力」とか「何かを犠牲する」とかとは無縁。奨励会以降は遊ぶシーンが多く、ストイックなシーンは全然ない。だからプロになれないんだけど。永山絢斗演じる友人の奨励会員が「ストⅡやろうぜ」ばっかり言うから、将棋やれよ!とツッコみたくなる(でも彼はあとでちゃんと棋士になっている)。そして退会後、就職してアマ棋界に復帰、さらに編入試験が決まっていくんだけど、「特訓」のシーンは描かれないまま、どんどんプロを倒していく。

もちろん、実際の瀬川棋士はメチャクチャ努力をしているのかもしれない。でも劇中では瀬川は他の棋士に「才能が羨ましい」とか、瀬川が負けたとき「あんな奴(瀬川の相手)に負けるはずない」と言われる存在である。瀬川自身も「(棋士は)みんな天才」という。つまり自分の才能を否定しない。でも、プレッシャーが瀬川の才能を押しつぶし、プレッシャーで遊びへと逃避し、才能を浪費した。でももともと強いんだから、プレッシャーが軽減できて、伸び伸びやれば、勝つ。

ということで、この映画を動かしているのは、「血の滲むような努力」じゃなくて、「天才性」なんじゃないか。そういう話の動かし方が、成功譚としてはわりと珍しいんじゃないだろうか。

でも、もしかしたら将棋の世界というのはそういう世界なのかもしれない。そういえば、『三月のライオン』で解説を書いている先崎学もよく遊んだと書いてあるし、村山聖も「酒と遊びを覚えた」という話が『聖の青春』であったように思う。それでも強い棋士は強かったんだろう。
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