カマリス

さびしんぼうのカマリスのレビュー・感想・評価

さびしんぼう(1985年製作の映画)
5.0
『転校生』『時をかける少女』に続く尾道三部作の三作目『さびしんぼう』。
 順番に視聴して、どれも良かったが個人的にこの『さびしんぼう』が一番好みで非常に響いた。

 尾身としのりは相変わらず棒読みだし、ギャグシーンも見てるこちらが恥ずかしくなり苦笑いしてしまうシーンも少なくない。

 しかし、なぜだろうか。作品を通して上品な純文学的テイストが非常に感じられるし、説明し難い感動がある。
 本当に良い作品は言葉にしにくいというが、大林宣彦監督作品はまさにそのように感じる作品が多く、特に本作はそのように感じてしまった。

 なんとか言語化しようとするならば、本作では一貫してある(少し偏った考えではあるが)普遍的な親子関係とそこにある恋愛論を表現しているからではないだろうか。
正直言って、だいぶ際どく危うい親子関係と恋愛論を提示している。
だからこそ、その論に説得力を持たし感動させるこの映画と監督の情熱がひしひしと伝わってくる。
 『時をかける少女』の憂鬱な閉じた世界とは異なり、本作では賛否はあると思うが個人的に非常に美しい円環構造で閉じられているのも良いと感じた所である。
 また、大人もかつて少女や少年の時期があり、その時期が母親だけではなく母親を見舞いに来た先生や母親の友人など大人にも未だに残っていると表現しているのもすごく良かった。
 そして、尾道三部作にとくに顕著に現れているが少年少女から大人になることをしっかり扱われていることも、さすがとしか言いようがない。
 
 この作品に大きく関係するショパンの『別れの曲』と美しい尾道の風景が忘れられなくなる作品であった。
 また観たい。
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