すとんこ

負け犬の美学のすとんこのレビュー・感想・評価

負け犬の美学(2017年製作の映画)
4.0
引退を目前に控えたボクサーが、どのように自身のキャリアの締めくくるのかって話☆

49戦13勝3分33敗の弱小ボクサーなれど、豊富な経験と分析眼、そして自称打たれ強さが自慢。
50戦目を持って引退としていたが、なかなか試合も組んでもらえず、家族を食わせることもままなりません。そこでたまたま耳にしたスパーリングパートナーの話に食い付き、なんとか雇って貰うことに成功。相手はチャンピオンに返り咲こうとする黒人ボクサー。ですが、初日のスパーで「こりゃ、ポンコツだ、おま、もぅいいわ」ってな感じで、いきなりのクビ宣告。いやいや、そう簡単に引き下がる訳にはいきません、とどうにか食い下がって残留を勝ち取ります。

スパーリングパートナーになったことで、それなりの収入が得られることとなった途端、金使いがアラくなっちゃうダメ父ちゃんな雰囲気ですが、奥様にも子供たちにも愛されている幸せパパ。特に娘ちゃんはなんとかパパの試合する姿を見たくてしょうがないのですが、パパはダメの一点張り。自分が殴られる姿を見せたくないのでしょう。どっちの気持ちも分かる。

しかし、タイトルマッチを控えた黒人ボクサーが公開練習をするということで、遂に娘ちゃんが練習試合とはいえ、パパの戦う姿を目撃することに。それは娘ちゃんにとって残酷なものでした。ファンサービスとはいえ黒人ボクサーの侮辱的行為で公衆の面前で晒し者になるパパ、心無い観客の罵詈雑言。耐えられなくなった娘ちゃんはその場を逃げ出します。辛すぎる。

その後、遂に50戦目の試合が組まれることとなったパパは、キャリアの全てをかけた最高の試合を繰り広げます。最高の仕上がりで輝くパパの勇姿を、観客席で見つめる娘の姿はありませんでした。泣ける。

しかし、私が真に見たかったのは、その日のメインエベントで行われるタイトルマッチに望む黒人ボクサーが、パパが以前、彼に授けた戦法を使い勝利する姿でした。永年培われたボクサーとしての経験と試合勘で、トレーナーの作戦に異を唱え独自の作戦を提案しました。それが採用され、見事、黒人ボクサーがチャンピオンとして返り咲き、パパの提案が正しかったと証明して欲しかった。本編ではその試合結果は描かれませんでした。どうなったんだろう、気になるなぁ。

ボクサーという生き方を選び、輝かしい結果は残せなかったけれど、家族に認められ愛され、充実のボクサー人生だったパパが羨ましいなぁと思った一本(^_^)☆


○キャスト○
スティーブ・ランドリー:マチュー・カソヴィッツ
マリオン・ランドリー(スティーブの嫁):オリビア・メリラティ
オロール・ランドリー(スティーブの娘):ビリー・ブレイン
タレク・エンバレク(黒人ボクサー):ソレイマヌ・ムバイエ
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