アキラ

飢えたライオンのアキラのレビュー・感想・評価

飢えたライオン(2017年製作の映画)
3.6
"このライオンたちは飢えていない。
面白半分なのだ。"
——森達也 監督の論評より——

緒方貴臣 監督作品
「飢えたライオン」
緒方監督の作風として、
人間の内面に宿る、
凄惨性、弱さや醜さなど
本能的な部分を描く作品が多い。
本作でも、集団における
同調圧力や心理、
個に帰結しない、
いわゆる日本人特有の
"空気"と呼ばれるモノの
怖さを描いている。

◼︎ストーリーは、、
始業前の朝会で男性教師が
出席確認中に、
未成年との淫行容疑で
警察に連行されたことで
事件がはじまる。
数日後、淫行動画が流出し、
瞳(松林うらら さん)ではないかという噂が流れ始め、
抗う術なく、徐々に
追い詰められていくが。。

◾︎脚本/演出について
全体を通して、
緻密なミスリードはあっても、
公式な正解はないように
作る事に終始してる。

これは、徹底してテーマに
フォーカスする、
という意図のように思えた。
つまり、あなたが見た「ナニカ」について、どのように
解釈してもよい、ということ。

この映画を見て、
感じるモノがあった、
ということが大事で、
正解の1つだと思う。

しかし、社会問題に触れることで、大衆向けにするのであれば、
問題提起だけでなく、
1つの見解を示して欲しかった。
これは、結末に関してではない。
もちろん、取り上げたテーマに
対して、YES/NOでわかる答えを
出してほしい訳でもない。

この途方もない自然災害にも
似た悪に対して、
ぼくらがどう立ち回れば
よいかということを
考えさせるように、
仕向けてほしかった。
作品を通して監督の考えは
みえず惜しかった。
これでは僕らは瞳と同じ結末を
迎えてしまう。

◾︎1つだけ気になること
劇中、無数に悪の所在を
ミスリードさせる中、
水石亜飛夢 さん演じるヒロキの
先輩である、
西島(品田誠 さん)だけが、
どの立ち位置から
見ても徹底して個に帰結した悪
であった点だ。
彼の役割だけが、
ミスリードの対象とされずに
いた事が逆にミスリードしているように思えた

◾︎キャストについて、
主演は、瞳を演じた松林うららさん、
思春期の女の子の難しい心情を
見事に演じ、
難しいテーマである本作の世界観に、観客は没入できただろう。
相乗効果を生み出してくれた
メインキャストは
瞳の仲良しグループ、
美咲役の菅井知美 さん、
七海役の日高七海 さん、
萌役の加藤才紀子 さん。
菅井さんは、女性社会の覗いた
気分にさせてくれ、うわぁ怖え
って感じになりました。
日高さんは、
11月初日を迎える「左様なら」
という映画に出るのをキッカケに、知りましたが、演技は初見。
本人が目指しているかは
分からないので、恐縮だが、
伊藤沙莉 さんを
見ているようだった。
劇中でもいいバランスの
空気感をだしており、
めちゃくちゃ良かった。
特にインターホンと
化粧室のシーンが良い。
加藤さんは、ていねいな演技で、優しい印象。
机の落書きを消すシーンが
ステキすぎた。

◾︎消費され続けるモノ
殆どの人がルーティンな
生活を送る中、
刺激を求めて、
様々な非日常のコンテンツを
消費し続けている。
しかし、一歩間違えれば、
それは、ヒトの人生を
狂わせるものになるし、
逆に面白おかしなモノとして、
消費される側になり、
狂わされるかもしれない。
ひとりひとりは、
大したことはないかもだが、
集団になった時それは、
いっきに牙をむく。

劇中のモヤモヤは、
自分の中に悪があるからだ
しかしそれを自覚することが
大事なのだ。

自身を見つめなおすキッカケに
なる映画、ぜひご覧ください。

(公開中にレビューを
書き終えられず無念。。)
アキラ

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