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飢えたライオンのKentaのレビュー・感想・評価

飢えたライオン(2017年製作の映画)
3.6
噂話やフェイクニュース、そんなものに流され続ける人間の悪いところを皮肉ってる作品。今の世の中だからこその問題、そして、所詮他人は他人、みんな自分のことしか考えていない。そんなことを訴えかけてくる一作。
監督は、『子宮に沈める』の緒方貴臣であり、衝撃的な一作となっている。

ある日、担任の細野は未成年に手を出したことを疑われ、警察に連行される。
その後、その話で女子仲間と盛り上がる瞳。瞳は、SNSではイケイケで素敵な彼氏もおり、女友達に自慢するような幸せな学生生活を送っていた。そして、しょっちゅうデートをしていた瞳とヒロキは、ある日にラブホテルで体を重ねる。
その翌日、細野の淫行動画が学校で出回っていた。そこに当たり前のように登校した瞳。女友達たちは、その動画の女性が瞳だという噂が広がっていると伝える。それは、デマ情報であるのだが、次第にその情報は広がっていくことになる…。

胸くそが悪すぎる。
短時間の映画にもかかわらず、長編映画を観終わった後かのようなぐったり感。内容が重すぎて、体力を全部持っていかれた。さらに、ワンカットで途切れるような作りになっており、ワンシーンが脳裏に焼きつきやすくできているイメージ。ただ、酷くて最悪な展開になっていく一作だが、現代とこれからの情勢を考えると、ありえる話で、身近な恐怖をジワジワと感じさせてくれる。

SNSやネットニュース。これは日常茶飯事関わるもので、現代なら常に意識してしまうだろう。デジタル社会だからこそ、なんとでも言えてしまう。そこで、生まれてくる弊害が、フェイクニュースだ。そして、SNSという各自の承認欲求の塊と架空の自分の存在だ。これらのせいで、デマも信憑性が高まってしまう。現代の闇だ。

デマを疑うことのない人たちによって、噂話はまるで事実へとなり得ていく。それによって、性的イジメを受け続ける瞳。使用済みコンドームを下駄箱に入れられたり、机に卑猥な言葉を油性マジックで書かれたり…。終いには、ローターが机に入ってるだなんて悪質なことまでされる。
彼氏にも見捨てられ、妹にも不潔と言われ、母親にも噂話のせいで疑われ、唯一の心の置き所になっていた彼氏の先輩には車内でレイプをされる始末。こんなん耐えられるか。しかし、このようなことはこうしてる今でもどこかで起こってるのだろう。そして、昔ならこんなこと絶対になかったはずだ。

最終的にあの決断をした瞳だが、その後も世間はフェイクニュースを流し続ける。そして、世間の注目なんてものは実際その時だけなのだ。時が経てば皆忘れる。どんなに優しい人だろうが、友達だろうが、素敵な言葉をかけてくれる人だろうが、結局のところ自分のことしか考えてない。そんなことを伺える一作だった。
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