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リズと青い鳥のwtson322のレビュー・感想・評価

リズと青い鳥(2018年製作の映画)
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言えなかった代わりに飲み込まれる息、瞳に移ろう光の輪、思い思いに動く手や足など、「一部分」が射抜かれるショットの執拗さに驚く、しかしことばは必ずしもすべてではなく、むしろありのままの情性を物語るのは身体言語の数々である。
学校という閉ざされた空間においても、そして楽器に触れずとも、耳をすませば世界はこんなにも音に満ち溢れている。こうして序盤から観客を引き込む”ソニマージュ”はまた、並行世界である「リズと青い鳥」にも流麗に色味を加える。
一方で、彼女たちは用意された物語に知らず知らずのうちに己を重ね合わせてしまう。お互いへの思いゆえにふたりは決して交わることはない。「ピッチの合わない」不穏さが徐々に画面を侵食していく。それでもハグを求めるのは、まだ見ぬ未来に童話のハッピーエンドを作り出したいからなのか。劇中唯一みぞれのことばがほとばしるシーンに、拭えぬ残酷さを感じた。
ようやく学校から抜け出た彼女たちは、並んで歩いて行く。「いまはまだ」わたしはあなたであり、あなたはわたしでありうるのだから。
p.s. 監督のまなざしはあくまで優しくてそれはそれで素晴らしいのだけど、なんだかメラニー・ロランの”Respire”を想起した、もう一度観たい。
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