空きっ腹に酒

失明に関する所感の空きっ腹に酒のレビュー・感想・評価

失明に関する所感(2016年製作の映画)
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視力を失い、向きあったもの。思い出の中で生きるか、未来に生きるか。どうしてこうなってしまったのか?と振り返るのか、これからをどうするか?と考えるのか。決して受け入れるわけではない、視力を失ったという出来事と、どう「向き合う」か。愛しいひとが自分に向けてくれた笑顔が、見慣れたはずの景色が、いつもそばにあった大切なそれらの輪郭が、ぼんやりとしてきて、いつしか煙のように消えては自分の頭の中からなくなっていった。生まれ育った場所で、過去を振り返った時、そこにあったはずのものがすっかり消え去り、姿を変えていたら…。自分の内側にあったはずの大切な何かがきっと崩れ落ちてしまうのは当然だろう、思い出や記憶は、ひとを形成するもののひとつだと思うから。
見えないのに、見えないからこそ外からの刺激を欲していた彼が、いつしか内側へ、内側へと意識が向いていく姿に心打たれた。嘆いているばかりでなく、自分の置かれた立場にきちんと向き合い、自分自身に語りかけ、たどり着いた先(でも彼にとってそこは通過点に過ぎなかっただろう)で、彼の未来に光が射すのを見た。
空きっ腹に酒

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