べべし

妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢのべべしのレビュー・感想・評価

3.5
 『東京家族』から始まった家族はつらいよシリーズの作品。成瀬巳喜男の『妻よ薔薇のやうに」のオマージュ作品でもある。
成瀬の作品を見ていないので、小津の『東京物語』からのオマージュ要素部分しか語れないが、山田洋次はこの作品だけで二人の巨匠をオマージュしていることからも、松竹蒲田の名監督達へのリスペクトがとてもある監督である。
 カメラで見ると、母親が家出した時の長屋独特のパンショットは日本だからこそ味の出るカメラワークである。
ストーリーは現代により寄せており、”主婦の労働”についての議論がより今風になっている。しかし、専業主婦の奥さんのへそくり問題をきっかけに家族はまた波乱を起こし、家族が一同に会する姿は今ではなかなか見られない家族のあり方だと思う。ましてや小津の『東京物語』で東京の街でそれぞれの生活を営み離れ離れになっている姿を映していたので今作では”家族の絆”がしっかりと描かれておりシリーズを重ねることで、山田は家族の暖かさもしっかりと映したかったように思える。
 また、山田は土地にもとてもこだわっている。やはり東京の下町にはこだわりがあるようで、京成線をあえて映したのも”柴又”という場所に対する愛情を育んできたからであろう。山田の映画で”VRゴーグル”という単語を聞く日が来るとは思わなかったので、そこでも時の流れを感じざるを得ないとともに、どこか昭和な良き家族と現代の家族のあり方が混ざっている印象をいだき、少しの不自然さは否めない。
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