一流のオートクチュールの仕立て屋レイノルズはアルマと出会い恋に落ちる。自分の仕事と生活スタイルを守り、アルマを仕事の道具としか見ないレイノルズと、愛されたいアルマは衝突を繰り返すが、ある時から二人の関係は変化し、逆転していく。二人の愛の行方、そして彼らが選んだ道は…
まず、英国の古くて美しい街並みと壮大な自然が美しい。そんな映像にダニエル・デイ＝ルイスがぴったりはまる、というか彼がこの映画の雰囲気を作り出しているといっていいだろう。
結論としては衝撃的というか倒錯したラブストーリーだ。レイノルズは母性への執着が強い一方で、それを隠すかのように仕事も女性も支配しようとする。
アルマは女として愛されることを求め、レイノルズを癒し救うことに、自分の生きる意味を感じるようになる。
映画の途中から、そんな二人の立場というか力関係が逆転していき、最後にはお互いにそれを望むようになる。
母親を追い求め、実は愛する女性を求めていたレイノルズはアルマを受け入れるのだが、そのラストの食事のシーンが衝撃だ。台詞のない調理の様子と、見つめ合う二人の様子が続き、アルマ「あなたには無力で倒れていて欲しい」、レイノルズ「倒れる前にキスしてくれ」って恐ろしいようで、二人にとっては究極の愛のかたちなんだろう。
ポール・トーマス・アンダーソン監督はいつも、台詞ではなく映像で無数のメッセージや登場人物の心情、起きている事実、変化を観客に伝える。特にこの映画は映像で見せているものが多く、すべてを見つけ感じるのは不可能ではないかと思うほどだ。
計算しつくされた台詞と映像には圧倒されるが、とても疲れる映画だった。
