tomo

ファントム・スレッドのtomoのレビュー・感想・評価

ファントム・スレッド(2017年製作の映画)
4.2

1950年代のロンドンを舞台に、オートクチュールの仕立て屋のレイノルズがミューズとして迎え入れたアルマと恋に落ち、、云々、、というお話。"恋に落ち"って程可愛いもんでもない。
.
とりあえず全編を通してJonny Greenwoodの劇伴が美しすぎる。(もちろん美しいのは劇伴だけじゃない)あと、声と生活音が強調された音響が終始緊張感を生み出していた。衣擦れの音、パンにバターを塗る音、、全てを意識してしまう。
.
冒頭のレイノルズ(ダニエル・デイ=ルイス)の身支度のシーンから引き込まれる。完璧を求め、自分のペースを守り、乱されることを極端に嫌う人。静寂を求める人だけど、運転はなんだか衝動的。アルマは郊外のウェイトレスでピュアにも見えるけれど、あのメモ書きとかなんかそれだけじゃないよね。最初のディナーのシーンが官能的だったなあ。別荘のシーンも好き。
.
アルマは生きるマネキンとしてレイノルズの傍で暮らし、尽くし続け、主従関係が成り立っているようにも見えるけれど、求められる女性で居続けるのかと思えばそうでもないし、そして徐々にその関係が歪んでいくのが癖になる。レイノルズも自分を乱されるのがわかっていながらも溺れていく。どんどん崩れていく。でも弱った時に母性を求める様は可愛いと思ってしまうよね。
.
正直、そういう方向にいっちゃう?って半笑いになる場面もあったけど、あらゆる完璧さと美しさに丸め込まれた。あの完璧さと美しさがあったからこそ、歪さが際立っていて、それがとてもよかった。いやー呪われているよね笑

上品なのに下品なところがとても好き。
tomo

tomo