アキラ

日日是好日のアキラのレビュー・感想・評価

日日是好日(2018年製作の映画)
4.0
"世の中には、すぐ分かるものと、すぐに分からないものの2種類ある。すぐに分からないものは、永い時間かけて少しずつ分かってくる。。"


森下典子ベストセラー自伝エッセイを映画化、
「日日是好日」(読み方はニチニチコレコウジツ)

お茶の世界を通じて、心の在り方について探求する
20歳の女の子の24年間を描いた作品。

◾︎キャストは、3人ともカンペキ
主演は典子役の黒木華さん。
細田守アニメ作品や、時代劇ものの印象が強いが、
内面に注目したテーマでの女の子を演じるには、
もってこいの女優さん。

重要な助演を務めたのは、武田先生役の樹木希林さん。
先日の訃報は、本当に残念でならないが、
本作では、作風も相まり、一言一句の重みが
ずっしりと心に響く役を好演。

そして、従兄弟の美智子役の多部未華子さん
主演級の彼女の存在感は、やはりすごい。
それでいて黒木さんの邪魔しておらず、
ぼくらが典子を理解する上で、重大な役を好演した。

◾︎ストーリーはありふれた悩みから、でも答えはない。
1993年、就職の進路を考え出す20歳の大学生典子は、
漠然とした将来について、決めあぐねていた。
そんなある日、母の勧めと、従兄弟の美智子のノリで、
ウワサの武田先生のお茶の教室へ通うことになる。
おかしな"しきたり"に戸惑いつつも、
次第にお茶の道を深めていく。
そして、将来に対する漠然とした不安や、
恋愛結婚と節目となるタイミングで、
お点前を通し、自身の悩みに対し心の在り方を問う。

◾︎カタチを成し、ココロを入れる。
剣道、柔道、弓道、華道、そして茶道。
それぞれに「道」が入る。明治時代以前は、
術という字を使っていた。
芸事に関しては、立花に、茶の湯とされた。
技に重きを置いた時代から、
礼節など精神性に重きをおくことに昇華した。
その精神性は、武術や芸事に関してだけではない。
誰もが、好きなことにのめりこめる一生を過ごせない。
なんなら好きなことを見つけることすら難しい。
たとえ見つけても、だれもが、自分を信じきれず、
ムダな一生を過ごしたくないと、上には上がいると、
オトナになるにつれ感じ、のめりこめなくなる。
そのタイミングは、あなたにとって、
学業からかもしれない、スポーツかもしれない、
音楽かもしれないし、就職活動、選んだ職、夢、
人間関係、そして、恋愛もそうかもしれない。
ただ本作が示してくれるのは、それらは、
永い時間をかけて、少しずつゆっくりと分かるモノ
だということだ。
技を磨く、それはカタチを成すこと。
意味なんかは最初はわからないことが大半だ。
見よう見まねでいい、フリからはじめ、
気づけばそこにあなたのココロが宿っていくのだ。
「好き」とは、そのようにして、ようやくはじめて
分かるモノなのかもしれない。

◾︎ニチニチコレコウジツ(日日是好日)
誰しも生きていれば、才能という大きな壁を前にする。
本作でも典子は、お茶の才能について、苦悩している。
他人が、自分がかけた遥かに短い時間で、
自らがやっと到達した域に、いやもしかしたら
それ以上に、到達していることに気づく。
なまじかけた時間が、皮肉にも相手と自分との
ものさしになる。埋まらない差を目前にしたとき、
積み上げてたものが、無為だったように感じてしまう。
アタマではもちろんその答えはわかる。
しかし、誰しも賭けたモノに、時間に、見返りを、
意味を、見出したいものだ。僕だってそうだ。
たとえば、優しさに見返りを求めてしまいがちだし、
映画を仕事にしていくと決めてからも、
常に不安は付き纏っているし、人と比較すれば、
嫉妬ばかりで、迷ってばかりだ。でも信じるしかない。報われる日を、カタチを成し、ココロが入ると。
もし、あなたもなにかに、迷い、不安に思うなら、
本作はあなたのココロに寄り添えるだろう。
"日日是好日"とは、そんな煩悩にも似た自らの心へ
在り方を、向き合い方への、1つの答えを示すだろう。


ゆったりと流れる優しい時間と音に包まれながら、
その答えを探しに、是非、劇場でご覧ください。
アキラ

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