ダイアン

FISHPEOPLE -海が変えた人生についての映画-のダイアンのレビュー・感想・評価

4.0
下書きしておいた感想がいつのまにか消えていたので端的に。

パタゴニアの製作、キースマロイが監督はもう鉄板チームだし、例に漏れず、海に生きる人々の暮らしを美しい映像でよく描いていた。撮影機材の進化は特に彼らのような自然文化を育む人にとって大きなチカラとなっているし、元々感性の豊かな人が多いから美しいカットを果敢に撮っている。

ビーチカルチャーを身近に生きるとき、その美しさや豊かさも当然あるのだが、“フィッシュピープル”つまり極端に言えば海の中で生きる人々にとっては、海のもっとも大きな存在感は「危険さ」ではないか。あるいは「孤独」。
人気のビーチやサーフスポットはしばし満員電車や渋谷・原宿よりも居心地の悪い人間社会を作り出し、なぜ自然に近づいて心身を癒そうと思ったのに逆にストレスフルなんだ?と辟易する。しかし、その深海に潜るとき、ダイブした先にサメを見たとき、その大波に挑むとき、ワイプアウトして命の危険を感じたとき、そこは絶対的に孤独な瞬間だ。

そしてその孤独を何度か経験すると、徐々に取り憑かれていく。生命感のない都市に魅力を失うようになり、小さな街路樹にも豊かさを感じられるようになり、人によっては経済合理性で進む開発や社会システムに抗う活動を進める。連帯感を生み出すこともあればしばし極端な思想に入り込みすぎて排他的になる場合もある。

絶対的に孤独であること。自然を前に我々は本来とても弱く小さな存在であること。都市化した僕らの身体はまだ野生の感覚を内部に宿していて、それは自然を介して「発動」することができること。
身体は嘘をつかない。健康のためにと、都心のプールで列をなして泳ぐことに、なんだか疲れてしまった。
ダイアン

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