アキラ

高崎グラフィティ。のアキラのレビュー・感想・評価

高崎グラフィティ。(2018年製作の映画)
4.3
"私たちの日常を大人たちは、
「青春」と呼んだ。"

川島直人監督、
長編映画デビュー作
「 高崎グラフィティ」

「TRICK 」や「SPEC 」で
有名な堤幸彦監督 を筆頭に、
「モテキ 」「恋の渦 」の
大根仁監督、
「世界の中心で愛を叫ぶ 」の
平川雄一朗監督などを擁する
クリエイター集団
オフィスクレッシェンドが
次代のクリエイターの
発掘・育成をめざし、
立ち上げた映像コンテスト、
「未完成映画予告編大賞 」=「MI-CAN」
第一回グランプリ受賞作品。

高校を卒業したある5人の若者が
新たな道が始まるまでの
"空白の時間"に自らが
生きた時間を振り返りつつ、
これからについての希望や期待、不安、悩みを描く青春群像劇。

冒頭のキャッチコピーの通り、
大人になってから感じる
いわゆる"青春"の
"不可逆的な輝き"や、
"瞬間性"を、
(おおくの人が通る高校卒業直後から新たな道が始まるまでの期間)、
"モラトリアム"の中で描く。

モラトリアムと聞くと、
ついつい大学生の人生の夏休み と例えられる、
「オレンジデイズ」のような
甘酸っぱい青春に思えるが、
むしろ大学生の青春を描く作品は少なく、
青春群像劇は、高校時代が
描かれることの方が多い。
※これは日本の大学進学率から、高校時代を描いた方が共感性が高いからと聞いたことがある。

少し脱線してしまったが、
高校の青春と大学の青春は
似て非なるものだ。

本作では、対比こそないが、
明白に描ききっており、
鑑賞中は当時のモヤモヤが
フラッシュバックしてきて、
黒歴史を掘り返されるような
恥ずかしさが
こみ上げてきさえする。

大人になって懐古主義的に
"青春"を捉え、美化しているが、
青春の持つ燃え尽きるような
一瞬の輝きの影に落としたモノをまざまざと浮かび上がらせてくる秀作となっている。

とはいえ、モヤモヤさせて
終わる本作ではない。
しっかりと鑑賞後は、
青春もつ価値観を再定義してくれる。

あえて雑な感想でいうと、
「そうそう、イロイロとあったのだけれど、
あの時間が僕らを成長させてくれたのだ」と。

そしてもうひとつ。
青春を構成する大事な要素、「親」の存在。

成長過程において、
親と向き合う時間は、
節目節目にやってくる。

こどもにとってそれは、
自分の生きてきて、
得た価値観を、
まさに魂ぶつける時間だろう。

僕もつい先日、親父が亡くなり、
本作について思い巡らしてるときも、
親という存在について考えさせられた。

劇中で描かれてるとおり、
主人公ミキの親は決してできた
親ではないのだろう。

しかし、どこかで親は完璧な存在として、
甘えてもいいと思ってないだろうか。
こどもが望む親に、
自らが親になった時に
なれる自信なんてないはずなのに。

望むとおりでなくても、
不器用でも、こどもに
無償の愛情を注げるのが
きっと親なんだろう。

本作を見て、
主人公たちに共感できるなら、
十分にあなたも大人だ。

それなら、本作の親たちの
見守る愛に滲んだ役柄に、
ぜひとも気づいて欲しい。

そしてもし、
あなたが仕事など忙しさを
理由に、しばらく親に会ってない、いわゆる青春を延長した拗らせたおとななら、
一歩歩み、自覚してほしい。
.
親と過ごせる時間は
少なくなっており、
無償の愛情に応えていく番だと。
.
主演は、美紀役を演じる佐藤玲 (りょう)さん
自分はみんなと違い、
誰よりも大人であろうとしながらも、
やはりまだこどもでもある
18歳の難しい心理を捉え、
見事に演じきった
素晴らしい女優さんです。
ちなみにインスタの投稿は
ひたすらかわいいです。

青春を再定義してくれる
珠玉の一作を
是非、劇場でご覧ください。
アキラ

アキラ