アベ二ティKazumaAbe

15時17分、パリ行きのアベ二ティKazumaAbeのレビュー・感想・評価

15時17分、パリ行き(2018年製作の映画)
4.0
シュール、珍作という前評判に反してだいぶ手堅いつくりで驚く。旅行のシーンとかどんな顔して観ていいか分からなかったけど、なかなか面白かった。

事件に居合わせた当事者(被弾した乗客まで!)を出演させ、職業俳優をなるべく用いないという撮影のとり方。切り離される作為や演出、そこに生まれる俯瞰性がイーストウッドの作家性と合致。堅実、朴訥さすら感じさせる作品になっていた。

一見シンプルながら「戦争を刷り込む大国アメリカ」「教育と偏見」といったテーマをそっと内包している感もある。が、個人的には「夢は叶うとは限らないが、その努力は人を裏切らない」系譜の物語として観た。最近のイーストウッドの作品が面白い点はやっぱそこで、示唆される物事に対して明確な否定や肯定をしないために鑑賞者同士で豊かな議論が生まれるつくりが良い。

あと、ラストで本人たちのインタビューがなかったのも良かった!あれが入るとどうしても逆光で立つビートたけしと「奇跡体験アンビリーバボー」のロゴを思い出してしまう。爽やかな後味含めて好きです