瀬良貴史

月夜釜合戦の瀬良貴史のレビュー・感想・評価

月夜釜合戦(2018年製作の映画)
4.7
大阪釜ヶ崎を舞台にした人情劇なんやけど、16ミリフィルムの荒い映像、十数年前のホームビデオかってぐらいの音質、所々に見れる安っぽさ、全部が作品に完全にマッチして、めちゃくちゃ良い作品になってた。
登場するのは、娼婦に薄汚い泥棒、溢れんばかりのホームレスにヤクザで、これまたゴミだらけの汚い町を駆け回るっていう文字にするとひどいもんやけど、なんでか魅力的に感じる。
現代の綺麗になった大阪しか知らん自分は、作中の最高に汚くて魅力的な大阪が同じ世界やって信じられへんぐらいに、古くて汚い大阪を描ききってて感動すら覚えて、でも同時に高槻の立ち飲み屋とか今里の居酒屋と同じ空気も感じて、やっぱこれが大阪なんや、なんて思った。
作中でも、そんな汚い大阪を浄化しようとする行政側の人間が出てきたわけやけど、京都の街並みが「古き良き」街並みとして保全されるのと同じように、あの汚い町が大阪の「古き良き」なんちゃうかなって思った。
どんどん大阪も綺麗になっていってるけど、ああいう大阪やからこそ生まれるもんがあって、こんな良い作品が生まれたんやから、やっぱ大事にしなあかん景色なんやと思った。
これだけのことを感じさせるぐらいの、これぞ大阪、て映画でした!
2017年これで締めくくるんありやと思います、みなさんぜひ!
瀬良貴史

瀬良貴史