Ryan

赤い天使のRyanのレビュー・感想・評価

赤い天使(1966年製作の映画)
3.9
地獄の天使


ストーリー
日中戦争が激しくなる中、西さくらは天津の陸軍病院に従軍看護師として配属される。毎日おびただしい数の兵士が運び込まれ、手術台のそばには切断された手足があふれていた。


主演 若尾文子
監督 増村 保造


傑作。
凄すぎる。
「火垂るの墓」や「はだしのゲン」等の反戦作品は主に"泣ける"。
しかし、この映画は"死"を感じる。
ここまでダイナミックに、かつ今まで観たこのないタイプの映画だ。

現代の風潮的にハッキリ言って「ポリコレ」の意識が高い方にはオススメ出来ない。
何故なら「戦場におけるエロティシズム」だからだ。
一般大衆映画で絶対に語られる事のない"残酷な性の描写"があまりに過激かつ繊細で、"女性を物として扱う"様子や"性交渉"が戦場において何を意味するのか?等、今では信じられない道徳観を持って描かれている。

海外からも「1960年代の映画でゴジラより優れている」と評価される等、この作品の持つ力は計り知れない。

今で言う「狂った愛」とはまさにこの事。
最近は"死"が身近ではなくなった。
だからこそ"死"に憧れ、取り憑かれる作品が増えた気がする。
しかし、この映画を観たら我々が持つ根底にある考え方までも変わってしまうのではないだろうか?

"死"はある物として存在し、その恐怖から人々は"獣"と化し女を抱く。
「人を殺すか、女を抱くか、飯を食うか」
このセリフがどれだけ残酷な言葉であるか。
これら全てが"同じ類"とされた時代のほんの少しを垣間見れた気がする。

とても恐ろしく、美しく、今に生きる人には苦しく冷たい映画と捉えられるかも知れない。
しかし、こういった事があったのもまた事実なのである。
Ryan

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