takamaru

赤い天使のtakamaruのレビュー・感想・評価

赤い天使(1966年製作の映画)
4.7
うわあ、やっぱり凄いなあ。この映画を見ると、戦争がどうしようもなくイヤなものに思える(戦争映画として大事なこと!)。岡部軍医(芦田伸介)は、病院前にずらりと並べられた負傷者を、摘出、切断、死亡の3つでざっくり仕分けして、麻酔もほとんど効いてなさそうな男たちの手足をノコギリでギコギコ切り落としていく。命を尊ぶ医師としての天分をどこかに追いやって、目の前の現実に対応していく苦しみを、モルヒネで誤魔化している岡部医師の年齢が40歳と語られることもあって、若い頃に見たときよりももっと響くものがあったなあ。看護婦の西さくら(若尾文子)との関係が、上官と部下としてのものから、極限状況の中でやがて愛情へと変化していくのも、心にぐっと迫るものがある。西という女は、病室で自分をレイプした坂本一等兵を告発したことで戦場に復帰させ死に追いやったことを苦悩し、両手を失って自慰できない折原(川津祐介)に生きる希望を与えたつもりが自殺させることになったと思い苦悩し、戦地で鍛えようとして連れて行った新任看護婦を過酷な状況に追いやったことで死なせてしまったと苦悩する。懸命の看護でそれ以上に多くの命を救っているのに、自分と関係した人物の死に大きな責任を感じる西は、そんな女だからこそ過酷な医療の現場をともにする岡部へと深く想い入れていったのかも。白衣の天使から女に変わるとき、途端に押しが強くなる西さくらという女の生々しさが、凄惨な戦場の中にあって、強烈に人間の“生”と“性”を照射させて、その眩しさと哀しさに戸惑いつつ感動する。素晴らしい映画だ。
takamaru

takamaru