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クリープ 2のYouのレビュー・感想・評価

クリープ 2(2017年製作の映画)
4.3
※※ナイフで胸をかっさばく。体を開くと中に宇宙が見えて美しいんだ。あらゆる時間のあらゆる場所を感じる。それが俺の宗教だったが、今は...仕事になった※※

※※無名ながら史上最大の連続殺人鬼のドキュメンタリーだ※※

🔪あらすじ🔪
連続殺人鬼のアーロン(前作のジョセフ)は、40歳を過ぎてある異変を感じていた。これまで情熱を注いでいたスナッフフィルム制作への関心が薄れてしまっているのだ。しかし、殺人を辞められるわけもなく、惰性的な殺人ライフを送っていた。

一方、ネットの個人広告から、その人の人間像を探求する"出会いの窓"という動画配信チャンネルの運営者・サラは、再生数が上がらないことに関して自身の才能の限界に悩んでいた。

そんな時、サラはネットで「動画撮影者求む。日給1000ドル。」の個人広告を見つける。
それ以外の内容について語らない広告主を不信に思いながらも、サラは自身をカメラマンと偽り、精進潔己の精神で仕事に臨んだ。

サラを迎えたアーロンは、自身が連続殺人鬼だと話す。
半信半疑のサラだったが、チャンネルの存続とアーロンに対する奇妙な好奇心から撮影を続行する。



🐺感想🐺

大好きだった『クリープ』の続編!
こっちも大好きだ
ホラー色は前作よりも薄めだけど、今回はまさに連続殺人鬼の心を覗くドキュメンタリー(モキュメンタリー)

【①本作ができるまで】
前作が公開された2014年内に続編(クリープ2)の制作をスタートさせる予定でした。
しかし、『クリープ』の成功によりデュプラスとブライスが多忙になってしまったため、制作を延期せざるを得なってしまったようです。
二年後、2016年にようやく制作がスタートされ、翌年2017年に全米公開に至ります。

この経験が『クリープ2』のストーリーを作る時点で大きな影響を与えている気がします。

本作品において殺人鬼アーロンは、自身の殺人への情熱が失われつつあれど、その衝動を抑える術もなく、惰性的な殺人を行っていました。

おそらく、監督のブライスやデュプラスも『クリープ』を制作した当初にあった映画へ向けるはずのエネルギーが別の仕事に注がれてしまい、情熱が冷めはじめていたのでしょう。
そしてコッポラの言葉を思い出したのかもしれません。...なんてバックストーリーを想像しちゃいました。


【②連続殺人鬼の心を覗くドキュメント】
前作は奇妙で不気味さを纏った最高のホラー作品でしたが、続編となる今作はホラー演出が控えめで、よりドキュメンタリー要素が強く、そういった点で物足りなさを感じるかもしれません。

スランプに陥っている殺人鬼・アーロンと、その心の奥を覗こうとする女性ジャーナリスト・サラ。
ふたりの奇妙な信頼関係が構築されていく様子が非常に興味深い。

「男女には隔たりがある。それを取り払うためには裸になることだ。」と産まれたままの姿を曝すアーロン。それに臆することなくカメラを回し続け、自身も服を脱ぎ始めるサラに驚きを隠せないのは、アーロンだけでなく、我々視聴者も彼女の強い意思を感じます。

アーロンはサラが「出会いの窓」を運営していることや、ナイフを隠し持っていることを知っていると打ち明けます。
困惑しシラを切るサラでしたが、
「現実をねじ曲げることはよくあることだ。僕もそうしてる。」
と彼女を責めることはないアーロン。

殺人鬼とジャーナリストの意外な共通点を語りながら、死生観の違いにアーロンの異常性を描いており、それらが奇妙に絡み合う展開から目が離せない作品でした。
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