YUMiC

万引き家族のYUMiCのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.3
2019.05.02 @DVD

家族とはなんだろう。
血が繋がっていれば
誰しも家族であることは
=幸せなのだろうか。

血が繋がっていても
愛情を与えることが出来ず、
虐待をし、殺してしまう親だっている。
血が繋がっていなくとも
本当の親のように愛情を受け
育つ子供たちだっている。

確かに本当の親というのは
何か言葉や概念を超えた
繋がりがあるのかもしれない。
でもそれが全てではない。
むしろそれが邪魔をする時だってある。

彼らは作られた家族だった。
傍から見れば常軌を逸した
おかしな関係にしか過ぎない。
でもどこか欠けたものばかりで
生きている彼らが
築き上げたその関係は
彼らだからこそ成り立ち、
偽物なのに本物のようになる。

かけたもの同士が居るだけで
どこか慰めあって
でも干渉する訳ではなく
本物じゃないからこそ
どこか心地のいい曖昧さの中で
共に生活をし、
そこには笑いも涙も穏やかさすらある。
彼らの家族の形は時に
本物以上に本物ですらあった。

私たちは他人の家族の表面しか見ないし、
知りえない。
彼らの実態が報道されれば
狂った人間たちの集まりと称され
白い目でみる。
一概に警察官の尋問もありきたりで
彼らが悪者として話を進めて
彼らの本質など知り得ようともしない。
確かに犯罪を犯す者が悪いんだけど、
映画を見て感情が彼らに傾いてしまっては
お前らは何も知らないと
警官にも報道陣にも言いたくなる。
でもそんなこと知らず
報道だけみたらきっと私もその一部になる。
物事のこの複雑に絡み合う世の中で
表面の中にある
本当の悪は何なのか。
どこなのか。
物事の事実は根底に潜んでいて
そんなに簡単なものじゃないと
言われた気がした。

捨てたんじゃない。
誰かが捨てたのを拾ったの。

印象的だった。
家族の在り方、
血の繋がり、
概念が全てではないこと。
色んなことを想わされた。
見終わって時間が経てば経つほど
何かが染み込み、
もう一度見たいと思った。

全ての役者さんが
演技ではなくそこにいるようで、
発するひと言ひと言が
セリフではないような
役者陣はもちろん、
子役の素晴らしさ。
そうさせる是枝監督の天才さ。
樹木希林さんの圧倒的存在。
本当に偉大な俳優さんが
この世を去ったのだと切なくなった。
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