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夏、19歳の肖像のkamicoのネタバレレビュー・内容・結末

夏、19歳の肖像(2017年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます



【 傷心状態でありながら満たされた気分だった 】

タオくんの出演作ということで、実は初めて中華映画を観ました(空海は除く)。ワタシは原作を知らずに観たので、純粋にスクリーンの感想を述べます。
 
結論からいうと、エンドロールの時間が足りなかった。息を詰まらせながら早く落ち着きたいと願うものの、感情の迷路にハマり一向に涙が止まらず自分でも驚きました。エンディングソングが回想のようで、色々なシーンがフラッシュバックしたんだと思う。もし違う楽曲だったら全く違う印象受けていたかもしれない。

そして、あまり全体の評価はよろしくありませんが、マイベストムービーの上位に設定しました。エンドロール内で落ち着けなかったのは初めてだったので、大好きなビューティーインサイドと弁護人のやり場に困る。
 
ああ、ほんとびっくりした...。
 
さて、何から話したいらいいかな。
「おいちょっと待て、お前不法侵入するんかい!尾行するんかい!せっかくの綺麗なお顔が台無し!」と思ったのですが、あまりここは触れずに綺麗な部分だけ話したいです。

『描写編』
人生が狂うかのように回る壊れたバイクのタイヤ越しのチャオ。インインが指でなぞったバーのマークを再会のための暗号にするエモーショナルな展開。チャオとインインに許された自由を祝福するかのように踊る海の波。自由の象徴になりうるバイクで出かけられない雨の日の憂鬱さと行き止まり感。カフェのカウンターで背中越しに奥の鏡に映るほんとうの顔。忘れないようにとチャオがインインの美しい瞬間をデッサンをすること自体が「この時間が永遠ではない」と物語る哀しさ。わかりやすい描写の中に込められた本当の意味を考えるのがとても楽しかった。燃え上がってはあっけなく散る「ひと夏の恋」かのように見えて、決してそうではない。
 
『セリフ編』
インインがいう「会いたかった」はチャオにとって切実なものだったはずだし、インインの本心以外の何物でもない。それでいて「愛していない」と言うのはひどく心が傷んだはず。(まるで、ラブレインの第3話だ。)
死んだはずの人が目の前に現れた瞬間、「人殺しを愛せる?」に動じず愛し続けたチャオが報われた気がする。その代わり、失わずに済んだ友人を失った。もちろん生きていた事実には開いた口が塞がらなかったし、徹底的に予想の斜め上を進んでくるので戸惑った。
母が言う「汚れている」(=人を殺した)の意味だと思ったが、本当の意味が明かされた時、自由を捨てて義理を尽くし続けるインインの強さに鳥肌がたつ。
 
『人物編』
チャオは、いたずらの犯人を探し回り身の回りのどの人物も疑わずにはいられない状況で、インインへの恋心無くして平然と立ってはいられなかったと思う。自分の身に危険が迫っていたわけだから。彼女への好奇心を満たし愛を貫き通す為に、彼がした行動はすべて容認できるかといえばそうではない。愛があったからとはいえチャオの犯罪ちっくな行為を受け止めたインインの気持ちがわからないから、成功したストーカーと皮肉っぽく表現するので精一杯だ。
 
インインは、悲劇のヒロインを演じ切るつもりなの?義理を突き通したのはかっこいいと評されるかもしれないけれど、チャオを散々振り回しておいてずるいと思った。もちろん彼女に非はない。そして、自由のためにお金を使ううちにお金で永遠の自由は買えないことに気づき不安を感じたと思う。愛の苦しみを問う姿はとても綺麗だったし彼女の見せ場だった。絵葉書は、ずっとチャオを思って書き続けるんだろうなあ。女優さんは蒼井優さんと石原さとみさんのお顔をブレンドしたような印象でした!
 
『好きなシーン』
二人で海に飛び込むシーン。純粋な愛をそのまま感じられてとても綺麗だった。インインが殻を破って、これから先の「自由」の存在に胸を焦がすように、自由にしてくれるチャオを求めるように。
 
『難しかったシーン』
赤ん坊の死体が見つかるシーン。今思えば、ここで彼女は殺人を犯していないと察することができたかもしれないけれど、完全に死んだと思ったから頭がそこまで追いつかなかった。
 
女友達のピアスと恋心、夏を越せずに死んだ爺さん、硫酸で負った傷、友人の行く末、母親へのお粗末な扱い、クリーニング店に現れる友人、気になるところは多少あるしこうして書きだしてみるとなぜあれほど心に突き刺さったのか不思議に思えます。多分、ここには書き出せていない何かがこの作品の最大の魅力に映ったんだと思う。チャオのような10代最後の夏は随分とドラマティックだ。

中国語がわかったらまだ随分違った解釈ができるんだろうなあ〜( ˘ω˘ )
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