オユユン

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドのオユユンのレビュー・感想・評価

4.7
現実の極悪人にフィクションの中で裁きの鉄槌を下す。アガサ・クリスティーもやっているその手法をタランティーノもよくやる。タランティーノにとって極悪人はおよそ二つ。世界を戦争の渦に巻き込んでめちゃめちゃにしたナチスと愛すべきハリウッドをたった一つの事件でぶち壊したヒッピー達。ナチスのほうは『イングロリアス・バスターズ』でヒトラーも、ゲッベルスも粉砕し、「お前らの罪は消えない」と世界に刻み込んだ。だから今度は、ハリウッドだ、ヒッピーだ、と生まれたのがこの映画(おそらく)。

タランティーノお得意のダラダラ会話も映画を撮るたびに進化しており、初期は単に冗長だな〜と思えたが、今作ではゆるゆると進んで、気づけば不気味な緊張感と静かな怒りを持ってしまっているという素晴らしい脚本になっている。映像もいちいち演出手法やら、音響やら、アスペクト比やらを変えていて非常に凝っている。

時間と空間、映画の形式までを飛び越えて「あの日のハリウッド」の夢のような虚構を描いてみせるタランティーノ。本当に映画が大好きなんだね。
オユユン

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