ねおねお

獄友のねおねおのレビュー・感想・評価

獄友(2018年製作の映画)
4.9
足利事件の菅家さんの手記『冤罪』を読んで、菅家さんのそれからを知りたくて、観ましたが、他の布川事件、佐山事件、袴田事件の関係者のお話にも釘付けに。
特に、菅家さん、石川さんと桜井さんが、獄中で辛かった経験として、両親の死に目に会えなかったことを挙げた際、布川事件の桜井さんが、親に報告ができないことから、「良いことがあった時に辛くなるというのは不思議なものですよね」と言われていたことが胸に刺さった。
このドキュメンタリーでは、事件の不当な内容や獄中での辛い経験についてはあまり描かれず、むしろ、かつて被疑者被告人と呼ばれた人たちがどうしているのかというところに焦点を合わせている。
冤罪にならなかったらわかりえない、言葉にはならないつながりがそこにある。
そして、未だ再審無罪が確定しない仲間を支え続けている。
「やっていないといい続けることがどれほど大変なことか、思いを馳せて欲しい。やっていないからずっとやっていないと言い続けられる。」という言葉には、何十年も冤罪でありながら、獄中生活を余儀なくされた桜井さんだからこその説得力がある。
辛い経験を乗り越え、共有し、分かち合う姿は痛ましくもあり、微笑ましくもあり、みな前を向いているということが1番印象に残った。
司法関係者は、戻せない時間を奪うということがどういうことか、当事者の声を聞かなければならない。
そこには、「刑務所に行ってよかった」という冗談のような本気の言葉もある。しかし、その裏に隠された苦しみや辛さが必ず見えるドキュメンタリーだ。

再審無罪となっていない、佐山事件と袴田事件を見守り続けたい。
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