Miver2

生きてるだけで、愛。のMiver2のレビュー・感想・評価

生きてるだけで、愛。(2018年製作の映画)
5.0
本谷有希子の原作小説がとても大好きな作品なのだけれど、原作の面白さやその魅力をしっかりと引き継ぎながら映画化されていて、とても面白かった。
全てが素晴らしかった。


趣里さん演じる寧子が一気に力技で捲し立てて話すあの感じは、原作小説を読んでいて思いっきり引き込まれた所と共鳴し合っているかのようだった。
原作の面白さを引き継ぎながら、映画ならではの魅せ方や演じ方で描いて行く面白さに溢れていたように思う。

序盤で突拍子もない出来事に思わず呆気に取られながら、観ていて思わず笑ってしまう。
そして2人の姿を映し出しながら鳴り響く、世武裕子さんの音楽がたまらなく良かったな。
鈴木清順監督「すべてが狂ってる」、ジャン・リュック・ゴダール監督「勝手にしやがれ」、イエジー・スコリモフスキ監督「出発」と言った作品達と共通するような所が感じられたりして、とても魅力的に鳴り響いていて最高だった。

物語を観ていると、何処かヒリヒリした感じもあったりしたし、時にその場面を音楽に例えるとブルースのようでもあった。
あと16mmフィルムで撮ったという映像は光の美しさ、深さを感じられたのがとても良かったりして。

途中、登場する仲里依紗演じる女性の立ち振る舞いとその存在感が最高だった。
主人公を捕まえて話すその場面での自意識の強い女同士のその席での会話がメチャクチャ面白かったし、穏便に終わらせるつもりが火をつけるあの感じとか、かなり笑った。

あと主人公を受け入れてくれる人達のブレなさに、観ていて思わず泣いてしまった。
容赦ないけど、優しくてそのままの姿や立ち振る舞いを受け入れるその心意気にグッと来る物があったし、主人公にかける真っ直ぐな言葉の温かみがとても深く響いて来る物があったりと。

菅田さん演じる男性の仕事の中での出来事や、その立ち振る舞いに釘付けにならずにはいられなかったし、主人公を受け入れるその姿にはこうやって書いていて思い出すだけで泣きそうになる。
菅田さん演じる役柄の同僚の石橋静河さんの美しさやその存在感がとても良かったしね。

物語が一気に最後へと駆け抜けて行く中で、身体に沿うように光が移動してた所にふと釘付けになる。
そして痛々しくてどうしようもなく遣る瀬無いけれど、切実な想いとその一瞬に感じる愛にどうしようもなく泣けてしまった。
あの終わり方はとても深い余韻を残してくれるし、2人のその先をもっと観ていたかった気持ちになる。

大好きな原作小説をとても丁寧に映画化してくれた事がとても嬉しかったし、世武裕子さんの音楽が物語を一緒に語るようなその鳴り響き方が最高だったし。
何よりも趣里さんの横顔を映し出すそのカット割りの美しさに釘付けになるしかなかった。


自意識が爆走して歯止めが効かなくなるあの姿はどうしようもなく痛々しくて、あまりにも遣る瀬無いけれど。
アクの強さや胸糞悪さもありつつ、奥床しさや愛おしさもしっかりと感じる事が出来る温かみや人間模様がとても観応えのある素晴らしい作品でした。
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