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カツベン!のオリのレビュー・感想・評価

カツベン!(2019年製作の映画)
3.9
 本作は無声映画のドタバタ感をさらに戯画化した、日本のニュー・シネマ・パラダイス。

 大正・昭和の時代は、無声映画に、劇場で楽器を奏で、役者のセリフ・説明をつける活動弁士を加えて有声劇となす。
 だから劇場や活動弁士ごとに多様な表現がありえた。これは能→狂言→歌舞伎から継ぐ劇場文化から流れ込んでできた日本独自の映画文化だった。

 しかし、声をつけることは、活動写真を野暮ったく説明しすぎるのではないか。活動写真そのものに語らせるということで、観客がみずから聞いていく表現があってもよいのではないか。
 映画自身が語る有声映画の到来は、当然のように活動弁士の職を奪うことになる。

 活動写真は全国で街の映画館に置き換わっていくが、さらにその先では、斉一性を特徴とするシネコンが郊外に並び建つ。
 そんな今に見るからこそ、現代の映画もまた説明しすぎているのではないか、との声が聞こえる。
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