アベベチゴベナ

美人が婚活してみたらのアベベチゴベナのレビュー・感想・評価

美人が婚活してみたら(2018年製作の映画)
5.0
大九監督に間違いなし!と言えるような、とっても面白く、胸に突き刺してくるような映画でした。

「勝手にふるえてろ」は原作から付け足した部分が素晴らしく、今作も同様に原作漫画からプラスされた部分がすごく良かったです。


まず、タイトルからしてルッキズムについての映画なんだろうな、と予想していましたが違う内容で驚きました。
美人が観ても、容姿に自信のない人が観ても、同じように感じる部分があって、
「美人でも辛いんだよ…」なんて同情を誘うような内容になっていなくて好感がもてました。
私自身、ブサイクだし、内面の残念さが染み出して更に残念になっているタイプの人間でも楽しめたので、よく出来てるんじゃないかなって思いました。

役者陣もとても良くて、脇を固める臼田あさ美と田中圭が素晴らしかったですね。
友情パートはガツンとくるものがありました。冒頭のおしぼりの扱い方がキャラクターの立ち位置を演出は良かったですし、あのフェイスブックのくだりはマジでよくある話なのでダメージが……。
田中圭と坂口健太郎は、もっとサイコパスになってほしい俳優なので頑張ってほしいですね…。

映画的な細部の演出が良くて、
例えば、「口の中の話」が効いてきたり、悲しいシーンに大声を出して泣くと陳腐になってしまうんですが(テレビのドラマだと分かりやすさ優先で普通に泣くことが多い)、この映画では激しい音で表現していました。漬物の話や、寿司、鍋など、食べ物に関する表現も上手に作用していたと思います。



ちょっとネタバレです。












恋愛でも仕事でも何でも、他人に埋めてもらおうとすると上手くいかないという普遍的なテーマは美人でも誰でも当てはまるもので、とても納得がいきました。
セックスをして肉体が満足しても全て満たされるわけではないし、その逆も然り、ということに、主人公が気づいていくプロセスも素晴らしかった、と思います。

「恋がしたかったんだ…」というセリフがありましたが、ここでいう恋は、自らが能動的に他者とコミュニケーションするということで、婚活サイトに選んでもらったり、他者から選ばれるのを待つわけではなくて、自分の足で歩くこと、を示しているので上手いと思いました。また、そこで喧嘩した友人に会いに行くという行動を起こした主人公はセルフセラピーをし、成長したように感じました。
また、その中で婚活サイトや出会い系アプリなどの批評的な観察もあり面白く感じました。

「セックスしたかっただけなんだ…くっだらねぇ…」など、パンチラインが多くてとても良かったのですが、「勝手にふるえてろ」に比べると少なめだったような気がします。そもそも、あの脂の乗り切った松岡茉優と比べるのがかわいそうな話ですが…。

中村倫也がフラれるわけですが、彼も人に満たしてもらおう、とするようなメンタリティが見受けられ、そんな2人が出会っても先に進んでいかないというのは、すごく納得がいきましたし、彼女が部屋から飛び出していくシーンは感動しました。彼が可愛そうという感覚はありませんでした。



今回脚本のシソンヌのじろうさんはめちゃめちゃ才能があると思いますので、どんどんやってほしいなぁと思います。あの原作からこういう形の1本の映画に再編集した手腕は見事だと思います。

あと、テラスハウス軽井沢篇のラストを少し思い出しました。


良作です!



思い出しがてらに…

「ピースオブケーク」という恋愛邦画の傑作があるんですが、主人公像はかなり近いんじゃないかなと思います。ラストもかなり近いように感じます。

タカコさんに言いたいのは、
仁村ヒトシ著、「なぜあなたは『愛してくれない人』を好きになるのか」を読んでくれ…