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ライトハウスのkyonのレビュー・感想・評価

ライトハウス(2019年製作の映画)
4.0
ロバート・エガース監督作品。

灯台守りの仕事でとある孤島にやって来た老人と若者。老人は若者に雑事を全てやるよう命令するが、灯り守りだけは自分でやると頑なに譲らない。過酷な肉体労働、老人による叱責、喧しい霧笛や海鳥への苛立ちや欲求不満のせいか、次第に若者は異様な光景を見るようになる。果たしてそれは悪夢か現実かーーー。

基本的に若者の視点で物語は進み、老人の執拗な怒号や耳を劈く重圧的な霧笛、甲高く切り裂くような鴎の声等に観客もまた追い詰められる感覚を覚える。モノクロームの映像の闇の中で灯台の灯りは登場人物を一際明るく照らし、狂い行く閉された世界の唯一の救いと思えてしまう。怒りや狂気、酩酊やグロテスクさの中でただひとつ穢れのない美しさを放つ灯りは果たして本当に救済なのか。それとも男達を惑わせ狂わせる張本人なのか。

演者の得も言われぬ脅威の演技力、モノトーンのコントラストが生み出す恐ろしいまでに醜悪かつ蠱惑的な画、異常な精神状態を掻き立てる音、それら全てが融合した結果生まれる狂気が輝きを放つ怪作であった。
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