ななこっこ

ライトハウスのななこっこのレビュー・感想・評価

ライトハウス(2019年製作の映画)
4.5
素晴らしい映画だった。映画による芸術作品。クセになる面白さとこだわりの強さを感じさせる。物語の舞台が1890年代だからモノクロで全編作られていて、初期の写真のようなビンテージ感を出しながら、映像は綺麗という不思議。あと劇伴の霧笛音も不穏な雰囲気を助長していて絶妙に怖かった。ミッドサマーみを感じた。

酒浸りで気のふれた老人と、どこか素性の分からないミステリアスな若者の2人は孤島にある灯台の番を4週間行う事になる。性格が真逆な2人は、もともと相性が良くなかった。それに追い討ちをかけるように嵐が来て、いつ帰れるか分からなくなり、絶望と狂気で次第に現実と幻想との境目が見えなくなってくる、という実話を元にした話。
混乱の象徴であるセイレーン(人魚)、プロメテウス(海神)や、セントエルモの炎(灯台)など、神話の要素が絡んできたりして考察を見て再度考える余地のある好きな感じの映画で本当に良かった。

観ている側も頭がおかしくなるような、でもどこか笑ってしまうような狂気を表現してるロバート・パティンソンと掴みどころのない老人のウィレム・デフォーの演技力には脱帽。それだけでなく撮影の技法というか、人魚とタコとが絶妙に交錯するあのシーンが本当に頭が混濁して不思議な感覚に囚われた。

なぜ酒が切れるまで飲むの…?と思ったけど、水道水が汚くて飲めないからなのね。食べ物も尽きてきてるわけだし、もう絶望しかないよね。酒の代わりに灯油を飲んで基地外になる所がこの世の終わり感があってとても良かったですね。
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