Tanuki

教誨師のTanukiのレビュー・感想・評価

教誨師(2018年製作の映画)
5.0
大杉漣さん最初で最後のプロデュース作。見終わったあと「なんて惜しい人をなくしたんだろう」と思った。世間では「犯罪者」という属性で括られて、いなかったことにされる人たちを、大杉漣さんは見つめていたんだ。小さくて殺風景な部屋で繰り広げられる会話劇は見ごたえがある

映画は、その日をただ待ち続ける死刑囚たちが、大杉漣さん演じる牧師の佐伯と交わす会話を、映し続ける。死ぬと決まっていながら、彼らはなぜ話すことを選ぶのか。あるいはなぜ黙するのか。人間とし生きるとはどういうことなのか、重く考えさせられる。

ラスト、まるで死後の世界のようだった真っ白な部屋から出て、明るい光の中をカメラとは逆方向に歩いていく大杉漣さん。現実での悲しい別れのことを思うと、偶然にも示唆的になっているシーンだった。この映画を見せてくれてありがとうございました。
Tanuki

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