カナグ

リバイアサンのカナグのネタバレレビュー・内容・結末

リバイアサン(1989年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

近未来、滞在期限二日前の海底採掘基地で作業中にクルーがソ連の沈没船”リヴァイアサン”を発見する。船の中にあった金庫を回収し、それには写真や記録映像など様々な物が入っていた。クルーの一人が金庫から年代物のウォッカを密かに盗み出し、飲んだことで体に異変が現れ始める。


海洋版エイリアン・SF二番煎じだと名高い今作だが、決してそんなことは無い。謎の生物が大暴れするだけでなく、閉鎖空間でじわじわと広がるいつ感染するか分からない恐怖、忍び寄る謎の物体などサスペンス風味に描かれていて、展開が読めていても楽しめる。

場面のところどころには『遊星からの物体X』『エイリアン』をイメージしている部分があるのは当然だ。今作の特撮担当は上記の二作品に加えて、『ザ・センダー』『プレデター』を手掛けてきたスタン・ウィンストンなのだから。彼がデザインしたクリーチャーの全容は終盤で明らかになるが、それがなんと趣味の悪い見た目な事か(褒めてます)。
嫌悪感溢れる姿に視覚から得られる効果はばっちりだと言えるだろう。ただ人間を襲うだけでなく行動原理についてもしっかり言及されており、それを重ねるたび奴らも進化し知能をつける。特に死体が融合するカットはおどろおどろしく大変気味が悪い。
体の中で異形の怪物が蠢いているシーンはまるっきり「エイリアン」のチェストバスターのアレと同じで、宿主ごと変化するのは「物体X」だが擬態しないだけ登場人物の心情的にはまだマシだったのかもしれない。
いや、取り込まれた人間には意識があるようだから最悪だ。可哀想に。
タイトルの「リヴァイアサン」は沈没したソ連の船名から取られていると思っていたが、旧約聖書に登場する鋭利な歯と硬い鱗を持つ海中の怪物”レヴィアタン”からだった。リヴァイアサンと言えば竜や蛇を思い浮かべるが、クリーチャーの姿は魚と組み合わせたものがモチーフになっているようだ。

ピーター・ウェラー演じる主人公ベックはクルーを束ねる立場だ。初めは中間管理職特有の板挟みで苦労している様子だったが、異常事態が起きても冷静に、時には激昂するも成長し、仲間を助け、クリーチャーに立ち向かうさまはヒロイックすら感じた。さらに良かったのはラストシーンだ。あの爽快さ、最高だ。
今作はB級なんかではない。SF海洋映画の傑作だ。程よい期待を持ってぜひご覧あれ。
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