ボボ浦田

軽い男じゃないのよのボボ浦田のネタバレレビュー・内容・結末

軽い男じゃないのよ(2018年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

仕事でも成功し、イケメンで、女性を口説くのが好きな男が、ある日突然、男女の立場が逆転した世界に迷い込んでしまう。

女性中心に社会がまわっていて、男性は家事や育児に追われ、社会では不当な扱いを受けている。この世界の男性は、仕事で全く評価されないどころかちゃんとした仕事にもなかなかつけないし、容姿や身なりで価値をつけられるので、好きな服を着て、言いたいことを言い、自分らしく振る舞うと「男らしくないよ」と言われる。そんな世界に絶句する主人公。

男女逆転の世界に迷い込む直前に一目惚れした女性と再会したことから、話はロマンスの方向へ進んでいくが、ここでもよくあるラブストーリーが完全に男女逆転した状態で描かれていく。

しかしよくあるハッピーエンドでは終わらない。

最終的には、すべての人が男らしさ・女らしさに(意識的であっても無意識であっても)縛られて生きていることが、いかに自分の成長や人とのコミュニケーションの妨げになっているかが教訓的に描かれている。

この映画は、ラブストーリーではなく、最初から最後まで徹底したフェミニズム映画だった。


現実社会を女として生きている身としては、男女逆転した世界の中で戸惑う主人公の姿を爽快な気分で笑って見ていられたのは一瞬だけだった。

この映画は、現代社会に溢れる女性の不当な差別の現実を、ありのままに(男性に置き換えて)描いている。

性差別を客観的に見ると、いかにこの世の性差別が理不尽でおかしなことかがよく分かる。

当たり前なこととして受け入れてきた価値観も、客観的に見ると「こんなに変なんだ…」とゾッとする部分もあった。見ていて辛かった。


この映画の興味深いところは、女性がかわいらしく着飾ることが「女らしくない」とされているところ。

ようは、女性はラフでナチュラルでいることがいいとされる世界なので、ブラジャーをつけていなくても、メイクをせず外出しても「みっともない」と思われないのだが、スカートやワンピースを着たりハイヒールをはいたりメイクしたりすることは「女らしくない」とみなされている。

これは、現代社会に置き換えると、「男らしさ」という価値観が、時に男性の自由を奪っていることがあることを表現しているんだなと思った。


性差別は、男性にとっても、女性にとっても、自分らしく生きることの妨げになっている。


自分らしく生きられる世の中になるには、何が必要か?


この映画を見終わった後、

チママンダ・ンゴズィ・アディーチェの『男も女もみんなフェミニストでなきゃ』

を思い出した。

これを見た後、いろんなことを考えていたら、自分のためにも、周りの人のためにも、社会のためにも、性差別がなくなることが理想だけど、実現する?不可能なのでは…?と、逆に痛いほど現実に引き戻された。

きっと道のりは長いんだろうな…

知的好奇心が刺激される面白い映画だったが、同時に、とても絶望的な気持ちにもなっている。

http://bobourata.hatenablog.com/entry/iamnotaneasyman
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