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存在のない子供たちのGumのレビュー・感想・評価

存在のない子供たち(2018年製作の映画)
4.5
中東の貧困に苦しむ家庭やその子供たちのリアルを観た感じ…重かった。
監督自身がレバノン出身ということもあってか、とてもリアル。
自身もゼインの弁護士役で出演している。
演技経験のない素人がほとんどだとは思えないほど。逆にそれがリアルだったのか、、、

主役のゼインの演技というか表情が凄い。
何もかもを諦めたように遠くを見つめる目、アトラクションに乗っても輝かない目。
「神様は僕にずっとボロ雑巾のままでいて欲しいんだ」と嘆く僅か12歳の少年、、、
調べると実際に学校にも行けず、10歳の頃からスーパーの配達をして家計を助けていたそう。
その過酷さを経験したからこその表情、、、
セリフも然ることながら、表情のみで語り訴えかけてくる演技が素晴らしかった。

ゼインの両親も一概に全てが悪いとも言えず、貧困に苦しみもがいていたであろうことを考えると辛い。
ゼインの妹サハルへの愛情が衝動的に行動を起こさせてしまったことも、両親への告訴も辛い。
ラヒルとヨナス親子との関係や、ラヒルもまた苦しみもがいていてもう何もかもが辛い。

ゼインの両親への告訴は、12歳が出来る精一杯の大人や社会に対する最後の抵抗だったのだと感じた。
ゼインの訴えは、何も中東のみならず海外の話ではない。日本もそうだと思う。
「世話出来ないなら産むな」「子供を作るな」
これは日本でも起こっている悲しい事件に繋がる。

ラストでようやくゼインのぎこちない笑顔と希望の光が見えて少し救われるが、終始重い。
けれど、本当に観てよかった作品でした。
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