冒頭からラストまで、
この主役の少年、ゼインの眼差しと表情から
目を離すことができない。
彼は演技経験なしの子供ゆえに、
この作品の中で実体験のように生きている。
生きるための糧を
小さな身体での肉体労働や犯罪まがいの仕事で稼ぎ出し
ズルい大人の言いなりにはならず、悪口も吐き
それでも社会の柵(しがらみ)から逃れられず、
悔しさに涙する。
しかし諦めず、一歩、一歩、前へ前へと踏み出していく。
踏み出さなければ、
周りと同じダメな大人になってしまうとわかっているから。
これほどまでに生きることに真っ向から挑んだ力強い瞳や
時には大人並みにふてぶてしく映る
苦虫を噛み潰したような表情
そしてはっと垣間見える子供らしさ…
生きることに、大事なものを守るために、闘いを挑んでいく
こんな力強い顔の少年を目にしたことはない。
彼に比べたら、
周りの大人たちの生活に対する諦念の情けなさ。
と、感じる私が一番なに不自由なく生活しているわけで
そんな私なんかがほざいても胡散臭さ満点だけど。
人種、宗教、貧困、人身売買、不法就労、
ユニセフの中吊り広告で見た学校に行けない子供、
11歳でお嫁に行かされる女の子がそのまま出てくる
そんな社会の中にいてもなお、
自分にとって大切な弱者を守ろうとし、
まっとうに生きたいと願うゼインの
純粋な精神が表れている言葉に、
一本の真っ直ぐな潔い美しさを見出す。