イガコ

存在のない子供たちのイガコのレビュー・感想・評価

存在のない子供たち(2018年製作の映画)
4.5
冒頭からラストまで、
この主役の少年、ゼインの眼差しと表情から
目を離すことができない。
彼は演技経験なしの子供ゆえに、
この作品の中で実体験のように生きている。

生きるための糧を
小さな身体での肉体労働や犯罪まがいの仕事で稼ぎ出し
ズルい大人の言いなりにはならず、悪口も吐き
それでも社会の柵(しがらみ)から逃れられず、
悔しさに涙する。
しかし諦めず、一歩、一歩、前へ前へと踏み出していく。
踏み出さなければ、
周りと同じダメな大人になってしまうとわかっているから。

これほどまでに生きることに真っ向から挑んだ力強い瞳や
時には大人並みにふてぶてしく映る
苦虫を噛み潰したような表情
そしてはっと垣間見える子供らしさ…
生きることに、大事なものを守るために、闘いを挑んでいく
こんな力強い顔の少年を目にしたことはない。
彼に比べたら、
周りの大人たちの生活に対する諦念の情けなさ。
と、感じる私が一番なに不自由なく生活しているわけで
そんな私なんかがほざいても胡散臭さ満点だけど。

人種、宗教、貧困、人身売買、不法就労、
ユニセフの中吊り広告で見た学校に行けない子供、
11歳でお嫁に行かされる女の子がそのまま出てくる
そんな社会の中にいてもなお、
自分にとって大切な弱者を守ろうとし、
まっとうに生きたいと願うゼインの
純粋な精神が表れている言葉に、
一本の真っ直ぐな潔い美しさを見出す。
イガコ

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