歪み真珠

存在のない子供たちの歪み真珠のレビュー・感想・評価

存在のない子供たち(2018年製作の映画)
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夏休みが終わってしまいました。月曜日から労働がはじまります。感想が長い、改めまして「真夜中は純潔」です。特に深い意味はありませんが、たまたま聞いていた林檎嬢の曲名が気に入ったので。大好きな美女、シャーロット・ランプリング様のアイコンとも親和性が高くてなかなかいいんじゃないの、と気に入っております。
また飽きたら変えますが、何か血迷って「令和の加賀まりこ」とか「甦った夏目雅子」とかに変えていたら躊躇いなく殴ってください。
こんなふざけた書き出しになってしまいましたが、今回の映画はきつかった。
線の細いたった12歳の少年の手首に手錠がかけられる絵は想像以上に苦しい。これがあくまでフィクションだと思ってどうにか自分を落ち着かせた。子どもは宝よ、子どもは未来なの。
彼が親のしていた犯罪行為(市販薬からクスリをつくる)を真似てお金を稼ぎ、自活しようとする。それも自分の快楽のためのお金じゃなくてさ、血の繋がらない弟のためのお金を。『貧しさ』とはこういうことをいうのだ。善悪を誰からも教えてもらえない。だってそうやってしか生きていけないから。そうやって生きてきた大人しか周りにいないから。自己責任なんて言葉は糞食らえだ。それはこの土地であっても、日本であっても。
そんな環境で犯したこどもの犯罪を誰がどうやって裁くというのか。

役者さんがほとんど素人だというのにあの説得力。それがこの映画の素晴らしいところでもあって、そしてかなしいところでもあった。彼らのすぐそばにこの日常があるんだ。

彼は血の繋がった家族から逃げ出して、血は繋がらないけれど信頼関係を結べる母親と出会った。
彼女の息子をぼろぼろの手作りの台車にのせて運ぶシーンも苦しい。
こういう映画やBS世界のドキュメンタリーなんかで世界の貧困や差別、その他たくさんの悲しみを見ると、とても気分が重たくなるんだけど しばらくしたら私はそんなことをすっかり忘れて暖かいお布団で眠り、仕事をして、美味しいご飯を食べるんだ。
でも、最近思うのは人は忘れるから生きていけるところもあるんだということ。だからといって、「ゼインのような少年がいることは忘れていいのよ、だって世界の悲しみをあなたが全部覚えていたら悲しくて生きていけなくなるから」なんて声にすべてを委ねることもできなくて。まだ私はこの矛盾を解決できていない。一生解決できないような気がするけれど。

ゼインの目が印象的で監督は「ゼインを見たときに彼しか主役はいないと思った」と言っていた。前も書いたけれど、私は人の顔(見た目)への信頼度がわりと高い。(美醜とかではなくて、顔の覚悟というか信念というか、、顔で食べて生きていけるほど恵まれていないけれど、そんな表情と雰囲気を持てるようになれたらいいなとひそかに思う)
彼の深淵を覗いたような目が語る「貧しさ」。親が悪い?社会?国?こんな貧しい国にした歴史?不安定な政情をもたらしたその地域の土地の特性?
ラストでようやく気づく。彼が笑ったところを今まで見ていなかったことに。子どもなのにね。


フィルマークスの点数を参考に映画を選んだことはないんだけど、フォローしている方がおっしゃるとおり、この作品は点数が高い。とっても意地悪な見方をすれば、これに低評価をつけることなんてできないけれど。
それでもよくできた映画だと思います。点数なんて関係なく。