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引っ越し大名!のshowのネタバレレビュー・内容・結末

引っ越し大名!(2019年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

◆途中から急激につまらなくなる

コメディかと思って楽しく見ていたが、途中から主役の星野源がダメ役人から覚醒して能吏になってしまい、そこから途端につまらなくなった。やっぱりコメディは最後まで笑いを足してほしいなと思う。

転封にともなって、藩が抱えきれなくなった武士が土着化するというのは実際にあったろう話で、得心がいった。ただ、武士である誇りも全部捨てて農民と一体化するような描写は、近世身分制ではないように思うのだがどうだろうか。だいたいそういう武士は郷士として由緒を語り継いだりするように思うのだけど。全体として身分制の描写が緩すぎて、江戸時代美化につながりそうで恐い。

ところどころ出てくる書付や帳面の字が実に現代的で、それはどうなんだろうと思う。とりわけ最後に出てくる、家来の名前を彫り込んだ石碑の字体が下手で、びっくりした。っていうか、あんな石碑に名前を羅列するのって、近代日本の忠魂碑じゃないんだから。

なんてことを言うと、時代劇だからそんなことにいちいちめくじら立てなくてもいいじゃない、と思われるかもしれない。でも、それは単に「史実と違う!」ということではない。「引っ越しは戦である」と言っていたが、その「戦」にかかわって死んだ人をみんなで慰霊するとなると、「日本て江戸時代から戦いの犠牲者をみんなで弔う社会だったんだねー」となっちゃうんじゃないか。それはつまり戦争で死んだ人を公的に祀うことを是認することになり、戦争反対者を抑圧するような社会になっちゃうんじゃないか。「お国のために死んだんだよ!」という言葉の強さの前に、個々人の悲しみ(なんでもいいから生きていてほしかった・・・)は抑えつけられてしまう。それは戦争の肯定にもつながりかねない。この映画の描写は、そういう戦争肯定の一要素になってしまうんじゃないか。っていうか戦前日本の戦死者慰霊なんてまさにそうだし。途中からこの映画が急激につまらなくなったのは、そういう忠魂碑映画になっちゃったからだと思った。
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