Gaku

ハナレイ・ベイのGakuのレビュー・感想・評価

ハナレイ・ベイ(2018年製作の映画)
4.2
 先日に観た『ドライブ・マイ・カー』(濱口竜介監督、2021年公開)から、村上春樹作品を原作とした映画を追うために、この作品を手に取った。公開からそれほどに評価もされておらず、かつ映画化でその作品世界を再現するのが非常に難しい村上春樹の原作のために、期待せずに観たのだが、よくうまくあの短編の作品を肉付けし、リアリティのある、ある種の哀しみを表現したものだと感心せざるを得なかった。タイトルのように過小評価されている佳作の一つかと思う。
 近親者を含め、われわれは死者に囲まれて生きている。だが、その死者がたとえ血縁的に近しいものであっても、人間的に尊敬もできず、理解もできないものであったりする。たとえ愛してはいても、理解はできない。
 吉田羊の一見に無表情な美しくそして時に険しい顔立ちは、何か懸命にを耐えているかのように見える。それが息子を失った母親という役割を、非常に見事に果たし、死者たちの「不在の在」を意識する人間性をよく表していたように思う。
 また、映画にあるハワイのカウアイ島の自然の景色が非常に美しい。村上春樹の非現実感を、見事に映画の「現実」に落とし込めた素晴らしい作品。
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