Ryan

魂のゆくえのRyanのレビュー・感想・評価

魂のゆくえ(2017年製作の映画)
3.5
「絶望は"うぬぼれ"から生まれる」


ストーリー
小さな教会の真面目で熱心な牧師を主人公に、現代社会が抱える様々な問題に直面する中で試されていく信仰の行方をスリリングに描く作品。


主演 イーサン・ホーク
監督 ポール・シュレイダー


50年もの長きにわたって構想し続けてきた野心作で集大成。

とても難しい。
最初から"静かな怒り"に燃えるイーサンホーク演じる牧師が「何に怒っているのか?」を一つずつ探していく様な物語に感じた。

些細な事から始まり、それが事件化していくにも関わらず"ほぼ無音"。
静かにゆっくりと映像が映し出されていくのに対し、イーサンホーク演じる牧師の"怒り"が蓄積されていく様は見事。

個人的に「何に怒っているのか?」の答え合わせをするならば、「神に怒っている」だと感じた。
聖職者でありながら人々に「神の声」を届ける事ができず、そんな事「神は望んでない」と思いつつも絶対的な悪に"軽々論破される"姿は滑稽。
信じたいからこほ「神の声」を聞きたがる訳であって、それを表現しようとするその心は邪心である。
2時間の尺の中で"世界の複雑な宗教事情"を映像化したようにすら感じた。

イーサンホーク演じる牧師が本当に素晴らしい。イーサンホークが終始良すぎる。彼の見事な演技の前には"神も脱帽"するだろう。

ラストの「結局人間」的なアプローチはとてもチープで好きである。最終到達点が「そこ!?」という驚きと納得があった。
静かな作品なのに、素晴らしく印象に残る映画であった。
Ryan

Ryan