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真実のkouheikoizumiのレビュー・感想・評価

真実(2019年製作の映画)
3.5
NO202117
世界の是枝監督がドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュ、そしてイーサン・ホークといった欧米のスター俳優を擁して作った作品で、言葉が通じない中良く作ったと拍手を送ることからはじめたい。

大女優ドヌーヴの自叙伝「真実」の発売を祝いにニューヨークに住む次女のビノシュが旦那のホークと幼い娘を連れてフランスにやってくる。だが内容は思いやりに溢れる自分を美化した内容なのでビノシュは納得できず、長年仕えてきた召使いは自分が登場しないことに不満でドヌーヴの元を去る。

一方、ドヌーヴは長女サラの再来と謳われる新進女優マノン(マノン・ルノワール)が主演の「母の記憶に」というSF映画に出演、そこで不治の病から延命するために宇宙で過ごす母親マノンと、地上で老いてやがて年齢が逆転してしまう娘(ドヌーヴ)を演じる。

この二重構造を背景に、ドヌーヴとビノシュの母と娘の確執の物語がミステリアスに展開する。家庭を顧みず、女優となって自分の地位を危うくしそうな長女サラを蹴落としたドヌーヴにビノシュは強く反発している。この母と娘の確執がこの作品の主題である。

子供時代のビノシュが出演して思い入れの強い舞台「オズの魔法使い」を実はこっそりと見に来ていたと明かされ、自分にビノシュを振り向かせようと、彼女のお気に入りの魔女役にチャレンジしたといった、母親らしい一面が次第に明らかになることで、ビノシュの母に対する敵意が和らいでいく。

一方、ドヌーヴが嫉妬するサラに対する当てつけは、マノンに対するイジメとして描かれるが、こちらも映画のクライマックスで中和され、マノンに対する優しさがサラへの償いのように描かれる。

映画はドヌーヴの住む邸宅と撮影スタジオをほぼ行き来する形で進められる舞台劇的作品で、大女優のエゴと嫉妬が入り混じった主人公の複雑な心が明らかになり、ビノシュは知られざる母の気持ちに接することでこれを許していくというお話だが、まぁ楽しい作品ではない。イーサン・ホークは存在感希薄だがマノン役のマノン・ルノワールの美貌が印象に残る。
独善的な大女優を演じるドヌーヴは、これは私と正反対のキャラクターと話すが、是枝監督は彼女に当てて脚本を書いたと苦笑い。
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