カロン

真実のカロンのレビュー・感想・評価

真実(2019年製作の映画)
3.9
全然プロモートされてなかったから危うく見逃すところだった。公開からだいぶ経ってたんだな…。

面白い、のは間違いない。母娘の確執がメインテーマだが、周りを固める役者も自然だし、印象的なシーンも多かった。終盤、母娘仲が融解してきてからのいくつかのシーンは思わず顔が綻ぶし、ラストの娘と孫の小芝居なんか最高だった。
なんか物足りない感じがしたのは、期待値が高すぎたからかなあ。でも、この映画にあと何か足したらめっちゃ邪魔な気もする。

タイトルでもある真実、という言葉からは、何が真実であるかは分からないが、嘘の中に真実が、真実の中に嘘があるということ、そしてそれが一人一人の中にある、という含みを感じる。記憶は当てにならない、というカットも、今回の真実に対するスタンスを補強している。そして、それを肯定的に描いているのが好印象。『奇跡』のときにもそんなことを書いた気がする。
ラストシーン、温かな空気に包まれて、家族が空を見上げる。全員が同じ空を見ているが、それぞれにとってどんな空に見えているのかは誰にも分からない。観客にも。

是枝監督の他作品からも感じることだが、描き手の視座が高い位置にあるな、といつも思う。映像はいい意味でとても生々しいのに。

なぜ物足りない感じがしたのだろう。是枝監督の作品からこうした感想を抱く経験をすでにしていたからかな。あるいは、最近自分の好みが少し刺々しい眼差しの映画に寄っているのかもしれない。
物足りないとか言っていてなんだが、感想もつらつらと書けたし、いい映画だったと思う。
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