Pachiddora

ビューティフル・ボーイのPachiddoraのレビュー・感想・評価

ビューティフル・ボーイ(2018年製作の映画)
5.0
久しぶりに見てみると、やっぱり名作だし自分にとってもとても大切な作品なのだと再確認できた。

昔は「父親が求めている自分は理想の息子であって僕ではない。薬物に溺れる弱い内面も本当の僕だ」といった、弱さも含めて僕なんだというニックの主張に共感していた。
だけど今改めてみると、薬物依存の中での言動や心理状態と平時では違うだろうし、いわば錯乱状態にある破茶滅茶な自分の姿を自分自身だと捉えるのは拡大解釈だと感じた。
だからこそ父親の「それは本当のお前じゃない」とニックの「これが僕だ」の口論にはとても意味があるように思う。
「これは病じゃない、治せない」というニックに「愛してる、救ってみせる」という父親がいるからこそ反発が生まれて、結局繋ぎ止められてるのかなとも思う。
everythingってなんだ?愛してるって誰を?あなたが見ている僕は誰?という、自己と他人の境界線をでっかい愛で超えてみせようとする父親の凄さを初めて実感した。
実感したけど、ニックがかろうじて保っている自己の脆さとか今にも崩れ落ちそうな儚さを見ると、どうしてもニックの味方をしたいという気持ちになる。

幸せになってくれ。
幸せがなんなのか考えるよりも先に。
Pachiddora

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